はじめての認知療法
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うーえの🐧@tosarino2026年3月26日読み終わった⭐️⭐️⭐️ 【安易な解決策やポジティブ思考に疲れたあなたへ。】 自分自身の心に静かに寄り添うための技法『はじめての認知療法』 私たちは生きている中で、どうしようもない苦しみや悩みに直面することがあります。そんな時、世間に溢れるありきたりの慰めの言葉や、合理的な「課題解決のスキーム」を提示されても、心には全く届かないどころか、かえって虚しさを覚えることはないでしょうか。 他者の痛みを完全に理解することが不可能であるように、私たち自身もまた、自分自身の痛みの正体に気づき、適切に扱うことは決して容易ではありません。 大野裕氏の名著『はじめての認知療法』は、そんないたずらに心を急き立てるような「ポジティブ思考のすすめ」ではありません。むしろ、無理に前向きになろうとして疲れ果ててしまった人にこそ読んでほしい、自分自身の心と静かに対話するための実践的なガイドブックです。 本書が教えてくれるのは、私たちが深く思い悩むとき、多くの場合「出来事そのもの」ではなく、その出来事をどう解釈したかという「認知の歪み(思考のクセ)」によって自らを追い詰めているという事実です。 「白黒つけなければ気が済まない」「絶対にこうあるべきだ」といった、無意識のうちに自分を縛り付けているレンズの存在に気づくこと。それは、自分の内なる声に対して「間違っている」とジャッジを下すことではありません。「今、自分はこういう極端な見方をして苦しんでいるのだな」と、客観的に理解しようとする試みです。 本書で推奨されている、自分の思考を紙に書き出す「コラム法」という作業は、まるで、傷ついた自分自身の隣にそっと腰を下ろし、ただそこにある声に耳を傾ける時間のようです。それは安易な解決策を自分に押し付けることではなく、自分自身の痛みに寄り添い、少しでも生きやすい「しなやかな視点」を共に探すという、ある種の祈りにも似た自己との対話と言えるかもしれません。 物事を深く考え、他者や世界に対して誠実であろうとするがゆえに、時に論理の迷宮や自己否定のループに陥ってしまう。そんな方にこそ、本書は心の風通しを良くするための新しい窓を開いてくれるはずです。専門用語を極力排した著者の語り口は驚くほど優しく、ページをめくるごとに凝り固まった心が少しずつほぐれていくのを感じるでしょう。 どうか、自分を責めるのを少しだけお休みして、この本を手に取ってみてください。きっと、あなた自身の心との、より穏やかでしなやかな付き合い方が見つかるはずです。


