小さくて強い農業をつくる

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うーえの🐧@tosarino2026年9月28日読み終わった⭐️⭐️⭐️⭐️ 「農業はセンスや勘、そして長年の経験がモノを言う世界である」——そんなステレオタイプを、痛快なまでの論理的思考で打ち砕くのが、久松達央著『小さくて強い農業をつくる』です。 本書は、脱サラして有機農業の世界に飛び込んだ「農業の素人」が、泥臭い一次産業の現場にITと経営理論を持ち込み、持続可能で高収益なスモールビジネスへと育て上げた軌跡を描いた実践の書です。 ■「職人の勘」をデータと言語で解体する 著者の久松氏は、自らを「農業のセンスがない凡人」と客観視するところからスタートしました。 だからこそ、熟練農家の頭の中にしかない「暗黙知」に頼ることをやめ、徹底的な「言語化」と「データ化」に挑みます。 毎日の気象条件、作物の生育状況、作業プロセスをすべてクラウド上のデータベースに蓄積し、属人的な技術を誰もが再現できる仕組みへと変換しました。 このプロセスは、あらゆるビジネスにおいて壁となる「属人性の排除」と「暗黙知の形式知化」の鮮やかな成功事例として読むことができます。 ■「こだわり」と「市場価値」の冷徹な接続 本書が秀逸なのは、「こだわり」という言葉の罠を鋭く指摘している点です。 生産者が抱く「自分の中の価値(こだわり)」は、必ずしも消費者がお金を払う「市場価値」と一致しません。 著者は、目標とする労働時間と利益から逆算して生産・価格計画を立てるという、極めてロジカルなアプローチを採用しています。 ロマンや牧歌的なファンタジーに逃げず、厳しい自然環境と市場経済のはざまで「いかにして適正な利益を生み出すか」というビジネスモデルの構築プロセスは、現代のD2CやSPA事業の立ち上げにも直結する普遍的な戦略論です。 ■個人の限界を超え、「強いチーム」を作る もう一つの大きな見どころは、個人事業の限界を悟り、チームビルディングへと移行する過程です。 前述した「作業の言語化・データ化」という強固な土台があるからこそ、経験の浅いスタッフでもスムーズに業務を習得し、即戦力として活躍できる組織が生まれました。 単なる規模拡大を目指すメガファームではなく、仲間と適正なスケールで充実して働く「強くて楽しいスモールビジネス」のあり方は、これからの新しい働き方のモデルケースと言えます。 泥だらけの畑を舞台に展開される、極めて高度な経営戦略と組織論。 農業に関心がある方だけでなく、事業の仕組み化に悩むプロジェクトマネージャーや、独自のビジネスモデル構築を模索するすべてのビジネスパーソンに、強烈なインスピレーションを与えてくれる一冊です。