ファビアン

2件の記録
ワタナベサトシ@mizio_s2025年11月21日気になる読み終わった図書館で借りた児童書作家として知られるケストナーだが、詩や風刺の効いた記事など大人向けの文章もたくさん書いていた(そのせいでナチスに疎んじられていた)。 (ワイマール共和国末期) 1928年『エミールと探偵たち』 1931年『点子ちゃんとアントン』 1931年『ファビアン』 1933年『飛ぶ教室』 (ナチス政権 1933年〜1945年) 1934年『雪の中の三人男』 1935年『消え失せた密画』 1938年『一杯の珈琲から』 (敗戦後 1945年〜) 1949年『ふたりのロッテ』 1949年『動物会議』 『ファビアン』は大人向けの長編小説で、現在ほとんど唯一邦訳版が読める作品。 児童書が大人気だったので無碍に弾圧すると国民感情を逆撫でするとの思惑もあり、ナチスドイツから亡命することなく国内にとどまっていたケストナーは表向きは変わらず日常生活を続けることができた。しかし『ファビアン』は禁書として焚書され、筆名を偽って国外の出版社から軽妙な娯楽小説(政権に批判的なことは書けない)を出すことしかできなかった。1899年生まれのケストナーが30代から40代の本来ならば最もあぶらがのっていた時期だったはずなのに、ナチ政権下12年は実質沈黙していたに等しい。 その直前、世の中がどんどん行き詰まる状況になってゆくのを肌で感じながら書かれた長編がこの『ファビアン』。まさかこの後あんなに酷い状況になるとは思いもせず、ナチの台頭を半ば静観して許容していたと述懐される当時の感覚は、不況と右傾化と排外主義が渦巻く現代の日本の状態に酷似しているのではないか。『ファビアン』は今の日本で読むとよりいっそう胸に迫ってくるものがあるのではないかと思う。 『さよなら、ベルリン またはファビアンの選択について』(2021年・独)として映画化されている。未見だが、予告編や評価を見るかぎり原作小説にかなり忠実な内容のようだ。いずれ見てみようと思う。
