ゆき
@yu-ki
p38
「ねえ、もしよかったらーーもしあなたにとって迷惑じゃなかったらということなんだけどーー私たちまた会えるかしら?もちほんこんなこと言える筋合いじゃないことはよくわかっているんだけど」
「筋合?」と僕はびっくりして言った。「筋合いじゃないってどういうこと?」
「うまく説明できないのよ」〜「筋合なんて言うつもりはなかったの。もっと違った風き言うつもりだったの。」
「〜何か言おうとしても、いつと検討ちがいな言葉しか浮かんでこないの。検討ちがいだったり、あるいは全く逆だったりね。〜ちゃんとした言葉っていうのはいつももう一人の私が抱えていて、こっちの私は絶対にそれに追いつけないの。」
〜「多かれ少なかれそういう感じって誰にでもあるものだよ」と僕は言った。「みんな自分を表現しようとして、でも正確に表現できなくてそれでイライラするんだ」
ゆき
@yu-ki
p45
東京に向かう新幹線の中で僕は彼女の良い部分や優れた部分を思いだし、自分がとてもひどいことをしてしまったんだと思って後悔したが、とりかえしはつかなかった。そして彼女のことを忘れることにした。
ゆき
@yu-ki
p45
東京について寮に入り新しい生活を始めたとき、僕のやるべきことはひとつしかなかった。あらゆる物事を深刻に考えすぎないようにすること、あらゆる物事と自分の間にしかるべき距離を置くことーーそれだけだった。
ゆき
@yu-ki
p49
直子はいろんなかたちの髪どめを持っていて、いつも右側の耳を見せていた。僕はその頃彼女のうしろ姿ばかり見ていたせいで、そういうことだけを今でもよく覚えている。直子は恥ずかしいときにはのく髪どめを手でいじった。そしてしょっちゅうハンカチで口もとを拭いた。ハンカチで口を拭くのは何かしゃべりたいことがあるときの癖だった。そういうものを見ているうちに、僕は少しずつ直子に対して好感を抱くようになってきた。
ゆき
@yu-ki
p210
「いちばん大事なことはね、焦らないことよ」とレイコさんは僕に言った。「これが私のもうひとつの忠告ね。焦らないこと。物事が手に負えないくらい入りくんで絡みあっていても絶望的な気持ちになったり、短期を起こして無理にひっぱったりしちゃ駄目なのよ。時間をかけてやるつもりで、ひとつひとつゆっくりとほぐしていかなきゃいけないのよ。できる?」
