
ワタナベサトシ
@mizio_s
2026年4月18日

フランケンシュタイン、日本到来
中川僚子
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青空文庫にも収められている宍戸儀一訳『フランケンシュタイン』は1953年(昭和28年)。同書のはしがきに訳者は「全訳としてはこの拙訳が最初ではないかとおもう。」と書いている。
本書はそれよりずっと前、明治の中頃(1889-1890年・明治22年)に抄訳ではあるものの『フランケンシュタイン』の和訳がなされていたという“発見”から、匿名の翻訳者を探りあててゆく、いわば謎解きの書である。
漢文調、文語調、口語調をとり混ぜ使い分け、和歌に対する造詣の深さも感じさせ、英語本文の細かな機微をうまく訳し移そうとする配慮まで感じさせる巧みさ。残念ながら完訳とはならず、しかも掲載されていた雑誌が廃刊されてしまったために2/3ほどの途中で終わってしまった邦訳作品。
翻訳者をほぼ特定したあとは、当人を取り巻く当時の日本の環境へと考察が広がってゆく。思いもしなかった人物との関連も浮かび上がってきて、すべては推察で確かめるすべはないのだが、ピタッとパズルのピースがはまってゆく感覚が心地よい。挿画についての考察は特に面白い。
いま読むことができる『フランケンシュタイン』現代語訳を経てから、ここで紹介されている初訳『新造物者』を比較しつつ読み比べてみると、簡潔にして鮮やかに訳出された文章の素晴らしさに驚かされる。訳者の正体を知ってさらに驚きは増す。