
うーえの🐧
@tosarino
2026年4月20日
ノーストリリア
コードウェイナー・スミス,
浅倉久志
読み終わった
⭐️⭐️⭐️⭐️
【一夜にして「地球」を買い占めた少年の、命と愛をめぐる壮大な冒険——コードウェイナー・スミス『ノーストリリア』】
もし、あなたが「地球そのもの」を買い占めるほどの途方もない富を手に入れたら、いったい何をしますか?
SFというジャンルには無数の名作が存在しますが、コードウェイナー・スミスが遺した唯一の長編小説『ノーストリリア』ほど、奇想天外な設定と詩的な美しさが完璧に同居する作品は他にありません。本作は、彼の壮大な未来史「人類補完機構」シリーズの頂点に位置する、決して色褪せることのない伝説的な傑作です。
【奇想天外な設定と、前代未聞の「生存戦略」】
舞台は、宇宙一の富を誇る惑星「ノーストリリア」。この星では、病に冒された巨大な羊から、不老不死の妙薬「ストルーン」が採れます。しかし、住民たちは富による堕落を恐れ、あえて過酷で質素な生活を送るという、奇妙で魅力的な社会が築かれています。
主人公は、この星の名家を継ぐ151代目の少年、ロッド・マクバン。彼は住民なら誰もが持つテレパシー能力に致命的な欠陥があったため、掟により「処刑」の危機に瀕します。生き延びるため、ロッドは一族の地下に眠る旧式コンピュータを起動し、瞬時の市場操作によって、なんと「地球そのものを買い占める」という前代未聞の奇策に打って出ます。
一夜にして全宇宙の富を独占し、同時に全宇宙の悪党から命を狙われることになったロッド。彼は暗殺者から逃れるため、身分を偽り、彼自身の所有物となった地球へと壮大な旅に出ます。
【哀しくも美しい「動物人」たちとの出会い】
地球でロッドを待っていたのは、暗殺者たちの罠だけでなく、人類に奉仕するために動物から作り出された奴隷階級「動物人(アンダーピープル)」たちでした。特に、誇り高く美しい猫娘ク・メルとの出会いは、不器用なロッドの心に大きな変化をもたらします。
本作の真の魅力は、スミス特有の神話のように語り継がれる詩的な文体と、その奥底に流れる深い人間賛歌にあります。
不老不死を手に入れ、悲しみも痛みも忘れて停滞する人類。その一方で、人間に虐げられ、短い寿命しか持たない動物人たちのほうが、よほど「人間らしく」愛情や誇りに満ちて生きている——。この痛切なコントラストが、読者の胸を強く打つのです。
【SF史に残る、最高にロマンチックな成長譚】
『ノーストリリア』は、単なる奇想天外なSFアドベンチャーではありません。これは、孤独な少年が途方もない富と引き換えに、「本当の命の価値」と「自分の居場所」を見つけ出すまでの、最高にロマンチックで切ない成長の物語です。
SFを読み慣れていない方にこそ、この美しくも残酷な未来の神話に触れていただきたい一冊です。最後のページを閉じた後、きっとあなたの心には、ノーストリリアの乾いた風と、動物人たちの気高い魂が、いつまでも温かい余韻として残り続けるはずです。
ぜひ、この比類なき読書体験を味わってみてください。
