稲見鴨 "捕食 (角川ホラー文庫)" 2026年5月11日

稲見鴨
稲見鴨
@inamikamo
2026年5月11日
捕食 (角川ホラー文庫)
Readsのタイムラインで見かけて気になっていたため、Kindle unlimitedで読了。 角川ホラー文庫にはあまり触れてこなかったうえ、読んだものは大体が呪い・幽霊・スプラッタだったのでジャンルを勘違いしていた……!いや、見ようによってはホラーだけれども。 ノワールサスペンスの色が強くて、読みながら染井為人『悪い夏』を思い出した。とはいえ、発売自体は本作のほうが9年ほど先。社会的弱者を狙い打った作品は読んでいると本当にやりきれない気持ちになる。 それぞれ違った種類の最悪な親子関係を絡めて作品が進行してゆき、最後にすべてが絡まりあった結果どうなってしまうのか……という緊張感がずっと漂っていた。正常な親というものが一人も出てこなかった気がする。 どの登場人物も基本的に考えなしな側面を持っており、あまり自省をするという習慣を持たない。そして、自己正当化がとても上手だ。 この視点で出てくるこの人物が他視点から見たこの人物だろうか?と想像するのが面白い。静江の正体は途中まで勘違いしていた。互いに対称的な価値観を持つ(特に、介護に関しては徹底的に逆の感性を持っているのだと明示される)ふたりが、老後の介護要員にふさわしい人間として全く同じ女性を選んでいる構図になっていたんですね。 最後は因果応報のトライアングルのように登場人物たちに様々な災いが降りかかってくるわけですが、ある程度この円環の中で完結するので、全く罪の重さに見合っていないように見えたりする。隆一郎が受けた罰と恒夫が受けた罰の重さがあまりにも違いすぎる。 この世界が量られた天秤のように因果応報を用意していないと知っているからこそ、ご都合を廃した重さの罰が降りかかってくるシーンは心が痛くなってしまう。 静江は本当に間違った道に進んでしまったが、このような環境に閉じ込められて、それでも必死に生きて、歪むことも許されないのだなんてとても言えない。 生徒E=黒川は最低な人間だけれど、キャラクター造形としては結構好きでした。
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