
うーえの🐧
@tosarino
2026年7月3日
読み終わった
ビジネス書
⭐️⭐️⭐️
今回は、少し立ち止まって「デザイン」という言葉の持つ意味を、もう一度捉え直してみたくなるような一冊、佐藤可士和さんの『世界が変わる「視点」の見つけ方 未踏領域のデザイン戦略』を紹介してみようと思います。
私たちは普段、「デザイン」と聞くと、色や形を美しく整える専門的な技術のことだと思いがちではないでしょうか。
しかし、日本を代表するクリエイティブディレクターである著者は、その前提を優しく、けれど明確に問い直しています。
デザインの本質とは、表面的な装飾を見せることではなく、「どのような視点から物事を捉え直せば、状況が面白く、あるいは良い方向へ向かうのか」という新しいアプローチを提示することにあるのだそうです。
本書で特に心惹かれたのは、デザインを「課題発見」「コンセプト」「ソリューション」という3つのステップで捉える考え方です。
その中でも最も高度で重要なのが、ゼロから奇抜なものを生み出すことではなく、「見えていなかったものを見えるようにする」視点の発見だという指摘は、とても腑に落ちるものでした。
そして、大きな社会課題や抽象的なテーマに向き合うとき、私たちが最も陥りやすい罠についても語られています。
それは「他人事」のまま思考してしまうこと。対象をいかに自分のリアリティ、つまり「自分事」として手元に引き寄せられるか。
このプロセスを深く経なければ、人の心を動かす本質的な解決策には決して届かないという言葉は、日々の生活や他者との関わりにおいても、深く問いかけてくるものがあるのではないでしょうか。
さらに興味深いのは、データや論理が重視される現代だからこそ、人間が本来持つ「動物的な勘」や「身体的な感覚」が鍵になるという視点です。
「あれ、何かおかしいぞ」という小さな違和感。膨大なデータからは零れ落ちてしまうような、こうした身体的なノイズこそが、AIには代替できない創造性の源泉になるという考え方は、これからの時代を生きる私たちに静かな勇気を与えてくれる気がします。
「防災」や「平和」、「幸福」といった、一見すると正解のない未踏領域に対して、私たちはどう向き合っていけるのか。
本書は、私たちの凝り固まった常識を少しずつほぐし、世界を見るための新しいレンズをそっと手渡してくれるようなガイドブックです。
もし、日常の風景に少しだけ行き詰まりを感じている方がいらっしゃったら、ぜひ一度、ページを開いてみてはいかがでしょうか。
そこにある新しい「視点」が、いつもの世界を少しだけ違う色に見せてくれるかもしれません。