
うーえの🐧
@tosarino
2026年7月9日

優良企業とゾンビ企業
水野由香里
読み終わった
⭐️⭐️⭐️
こんにちは、u-eno🐧です。年間200冊ほどの本を読み解く中で、時折「現場のリアルな手ざわり」と「学術的な分析」が見事に融合した書籍に出会うことがあります。水野由香里氏の『優良企業とゾンビ企業 中小企業の分かれ道』(光文社新書)は、まさにそんな一冊です。
日本企業の99.7%を占める「中小企業」。行政の統計やニュースでは、しばしば「平均値」という言葉でひと括りに語られがちです。しかし、新規事業の開発やDX推進といった変革の現場に携わっていると、この「平均値」がいかに実態から乖離した無意味な概念であるかを痛感します。
生き残りをかけて果敢にイノベーションへ挑み続ける企業がある一方で、存続すること自体が目的化し、補助金頼みで変化を拒む「ゾンビ企業」も存在します。
本書の最大の魅力は、著者が全国500社以上の中小企業へ直接足を運び、泥臭いインタビューから導き出した独自の「偏差値」によって、この残酷なまでのグラデーションを鮮やかに可視化した点にあります。
なぜ、ある組織は変化を恐れず、別の組織は硬直化してしまうのか。
本書が解き明かす「偏差値が高い優良企業」への条件は、極めて実践的です。経営者がいかにして、従業員が恐れずに「トライアンドエラー」を繰り返せるような、前向きな組織の物語(ナラティブ)を紡ぎ出せるか。
そして、「トイレや休憩室の整備」といった具体的な環境への投資が、いかに働く人々の心理的安全性を担保し、結果として高い生産性を生む事業構造へと繋がっていくのか。ここには机上の空論ではない、現場の血が通った生々しい組織論が展開されています。
本書は単なる経営学の啓蒙書ではありません。複雑に絡み合うビジネスの課題を解きほぐし、組織のあり方を「一歩前」へと進めようとあがくすべての実務家に向けられた実践の書です。
自社の現在地を客観的に見つめ直すのは少し痛みを伴う作業かもしれませんが、読み終えた後には、停滞を打破するための具体的なアクションと確かな希望が手元に残るはずです。
日本の中小企業の「本当の姿」を理解し、明日からのビジネスに新たな視座を取り入れたい方に、おすすめします。
※本書の注意として、光文社新書であることがあります。そのため、タイトルは釣り的であり、またレンガ積みの話が注でされているなど残念です。もちろんこれらについては、著者ではなく編集者に帰責されるものです。