
うーえの🐧
@tosarino
2026年7月11日
経営センスの論理
楠木建
読み終わった
ビジネス書
⭐️⭐️⭐️
「スキル」という名の幻想から目を覚ませ——楠木建『経営センスの論理』
新規事業の立ち上げやプロジェクトマネジメントの現場にいると、私たちはどうしても「スキル」の罠に陥りがちです。
市場規模を精緻に割り出し、競合をフレームワークで分析し、KPIを管理する。もちろんこれらは必要不可欠な実務ですが、ふと立ち止まってしまう瞬間はないでしょうか。
「要素をどれだけ細かく切り刻んでも、そこから『新しい価値』は生まれないのではないか」と。
楠木建氏の『経営センスの論理』は、まさにそんなビジネスパーソンの根源的な問いに、鮮やかな解を提示してくれる一冊です。
本書の最大の白眉は、ビジネスの能力を「スキル」と「センス」に明確に切り分けた点にあります。
著者は、論理的思考や財務知識などの「スキル」は、物事を細かく分解する「分析」のツールに過ぎず、誰がやっても同じ結果になるためすぐにコモディティ化すると喝破します。
真に独自の価値を生み出すのは、バラバラの要素を独自の文脈でつなぎ合わせ、ひとつのストーリーへと組み上げる「センス(綜合の力)」である、と。
では、その「センス」の正体とは何でしょうか。それは決して、一部の天才にのみ許された直感ではありません。
根底にあるのは「人間の本性への深い洞察」です。人は何に喜び、何に価値を感じ、どうすれば動くのか。
ビジネスが最終的に「人間」を相手にする営みである以上、人間の持つ矛盾や感情の機微を解像度高く理解できなければ、本当に人を惹きつける事業を描くことはできないのです。
かつて哲学や文学が探求してきたような「人間とは何か」という普遍的な問いが、実は経営の最前線における「センス」と直結している。
この事実に気づかされる時、読者はかつてないほどの知的興奮を覚えるはずです。
「分析的なスキル」は一通り身につけたものの、なぜか事業がドライブしない。あるいは、既存の枠組みを越えて、真の意味で事業を「構想」できる側へシフトしたい。
そう葛藤するすべての人にとって、本書は視界を一気にクリアにする強烈なレンズとなるでしょう。
単なるビジネス書の枠を超え、働くこと、そして人間そのものを見つめ直すための必読の書です。