
見汐麻衣
@mai_mishio
2026年7月13日

BUTTER (河出文庫)
柚木麻子
読み終わった
1日、24時間の中でも感情は怒涛のように変化して肉体を制止させたり、動かしたりする。
さっきまで激しく落ち込んでこれが奈落の底というやつか……と思っていたのに、開けた窓から摘み立ての花の香りような風が吹いただけで、世界の全てを明確に捉えたかのように脳の回路が覚醒して奈落の底から地上へ一気に駆け上がり、さっきまでただの棒と化していた肉体が料理をして満腹になり、モノを考えたり、他者とのコミュニケーションを求めたりし始める。
人が成長していると思うこと、自己肯定を確かな感覚として手にするのは物事の結果によってではなく、ゴールが定かではない螺旋階段のような空間を緩急ありながらも自分で道標を立て、無理矢理でも道に変え進んでいくその行為自体をいうのかもしれない。
ページを巡るたびに、感覚的共感もあると思うけれど、物語にでてくる全員の中に自分がいた。
影響って、受け合うではなく、請け負うもので、その報酬は自分がいつの間にか変化していくことにある。読書途中、そのことに気付いてからは、各々場面での食事や料理シーンのトーンが明らかに変化して後半はもう、号泣しながら読んだ。
食べることも料理することも、毎日のこと。
毎日何かを捌き、捌かれる行為のもとで全ての行いの赦しを乞い報うために食べて暮らしているのかもしれないと、そんなことを思うに至ったBUTTERをたった今読み終えた私は数時間前の屍のような状態が嘘みたいです。
最高の読書時間でした。



