うーえの🐧 "帝都物語 第壱番" 2026年7月29日

帝都物語 第壱番
帝都物語 第壱番
田島昭宇,
荒俣宏
⭐️⭐️⭐️ 近代都市・東京の地下には、血塗られた呪いと怨念が渦巻いているーー。 荒俣宏『帝都物語 第壱番』は、私たちが教科書で学んだ「輝かしい日本の近代化」の裏側を、圧倒的なスケールとペダントリー(衒学趣味)で描き出す歴史ダークファンタジーの最高峰です。 ■史実と虚構が交錯する「裏」の近代史 舞台は明治から大正にかけての帝都・東京。 実業家・渋沢栄一が西洋列強に負けまいと風水を用いた都市改造を推し進める中、一人の男が帝都壊滅を企てます。 漆黒の軍服に身を包んだ魔人・加藤保憲です。 本作の強烈な引力は、幸田露伴や寺田寅彦といった歴史的偉人たちが、怨霊を操る加藤と「本気で」死闘を繰り広げる点にあります。 史実と虚構の縫い目が完全に消失するほどの緻密な構築力は、読者をたちまち妖しい近代の闇へと引きずり込みます。 ■呪術から科学へ、変貌する防衛戦 新装版『第壱番』の醍醐味は、明治を舞台にした「神霊篇」と大正を描く「魔都篇」を一気に味わえることです。 前半では、天才陰陽師・平井保昌が加藤と壮絶な呪術戦を展開します。 しかし、時代が下った「魔都篇」では戦いの様相が一変します。 地下に眠る「龍脈」を操り、巨大地震で東京を物理的に破壊しようとする加藤に対し、立ち向かうのは物理学者・寺田寅彦。 オカルトや怪異に対し「最新の科学と地震学」という論理的なアプローチで解き明かそうとする展開は、単なるオカルト小説の枠を超えた知的興奮を呼び起こします。 ■避けられない「破滅」へのサスペンス 加藤の恐ろしさは、辰宮家の令嬢・由佳理を呪縛し、自らの闇の血を次世代(娘の雪子)へと植え付ける底知れぬ執念にあります。 次々と犠牲を払いながら帝都を防衛しようとする知の巨人たち。 しかし読者は、歴史的事実として大正の終わりに「関東大震災」という未曾有の破滅が待っていることを知っています。 この「避けられない悲劇」に向かって進むサスペンスが、ページをめくる手を止まらせません。 現代の私たちが歩くアスファルトの下で、かつてどのような霊的闘争があったのか。 単なるエンターテインメントにとどまらず、都市空間の構造や社会学的な視点からも読み解ける、底知れぬ深さを持った一冊です。 ぜひ、帝都の闇とそれに抗った人々の生き様を目撃してください。
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