サリュウ "魚眠洞随筆" 2025年4月23日

魚眠洞随筆
魚眠洞随筆
室生犀星
"私には友達ちというものが此処へ来てから極く少数ないような気がした。その筈であろう私は十年振りで落ち着いて冬越しをしようというのである。べつに東京の余震がこわくて帰ったわけではなく、私には私らしい田舎ぐらしが好まれていたのである。いつかは一度かえってゆっくりと故郷の風物にしたしめそうに思われていたのが、こんどの機会にはるばる遣って来たのである。見知顔だとか、同じ町内の知人だとかなら沢山あるが、しかし戯れて日常世間のことを談じる人が見当らない。些っとした一言で、たがいの心を知り合うという同心の友がいないのは、十年の間に失うたのではなく、むかしから無かったのではないか? それは東京に居たって同じいわけである。" p.10 冒頭一発目から、おんなじだよ犀星〜〜〜。と思いながら読み始めた。そして現代にはそんな人が沢山いるのではないか。
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