ワタナベサトシ "完全犯罪の恋" 2025年5月2日

完全犯罪の恋
完全犯罪の恋
田中慎弥
初めて読む田中慎弥にこの小説を選んだのは、薄さと、恋愛小説であるということが理由。すこし畏れのようなものがあって、まずはダメージの少なそうなものから手を出したのだ。読み終わって、ダメージがなかったかというと嘘になる。たしかにくらった。ともあれ、最小限にとどめたいという思惑は成功したといえよう。 会話の多い小説で、登場人物の「カギカッコ」で囲まれたセリフは幾分ファンタジックな、というか、現実からすこし乖離したような言葉づかいに思える。頭の回転の速い人たちの発する言葉の応酬だからだろうか。現実のこととは思えないような、ほんとうに喋っている言葉を描写しているのではないような、舞台上で演じられているお芝居の台詞のような……。 恋愛小説として終わらせるなら終盤のちょっと駆け足気味の展開(語られる真実)は必要だったのだろうと思うけど、主人公に明瞭な“赦し”が与えられているようなヌルさも感じられるので、三人目のあの人は出てこないほうがいいなーと感じた。ちょっと都合がよすぎませんか。そうでもないか。要るか。要るかな?
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved