
尾崎
@ozaki
2025年6月5日

アレフ
J・L・ボルヘス,
鼓直
読み終わった
@ 自宅
〈わたしは以下のように推測する。ダミアンはマソジェルの戦場では卑怯者として振る舞い、その恥ずべき生を償うために生涯を捧げた。エントレリオスに帰った。いかなる者にも手を上げず、何者にもナイフの傷をつけなかったし、豪胆な男という評判も求めなかったが、しかしニャンカイの平原で雑草や牛と戦うことで鍛え上げられた。おそらくそれと知らずに、奇跡の準備をしていたのだ。彼は心のうちで考えていた。運命がもう一度戦いの場に戻してくれたら、相応の働きをしてみせるぞ、と。彼は四十年にわたり、淡い期待を抱きながら待ち続けた。そして運命はついにその死に際して彼にそれを許したのだ。妄想というかたちで許したのだが、すでにギリシア人らは、われわれが夢の影であることを心得ていたのである。苦悶のうちに再度、彼は戦いを生き、男らしく振る舞い、総攻撃の先頭に立ち、一発の銃弾によって胸板を貫かれた。こうして一九四六年、ペドロ・ダミアンは長い受難の果てに、一九〇四年の冬と春にかけて生じたマソジェルの敗北で戦死したのである。〉
p.102





