舳野
@henomohe
2025年10月11日

読み終わった
ネタバレあり。赤川次郎作品としては珍しく巻末に登場人物相関図が載っている。死んだ人をあわせて6組の父娘が出てくるので確かにややこしい。
・村瀬家 大学病院の教授の父と娘の田所朋余
・平本家 発見された幼女の死体の亜紀子の父と別れた妻五十嵐紀和子
・若菜家 建設会社社長の父親と愛子と年の離れた弟、信也
・松本家 刑事の父と中学生の娘、久世
・山倉由美子 売春をもちかける家出高校生
・谷川恵美子 父を殺した罪に問われる裁判で松本刑事と逃亡する。
この中でまともな父は松本刑事と平本氏だけという。村瀬と平本と若菜は娘を持つ親であり親しかったが、村瀬と若菜は娘にひどく執着し性的虐待を行っていた。朋余は乖離を起こしていてその間の記憶はなかったが平本の娘、聡明な亜紀子は朋余への虐待に気がついていた。幼いながらも両想いだった朋余を守るためと母の不倫で性的に潔癖だった亜紀子が村瀬の悪事を自分が朋余の服を着、間違わせ襲わせて被害者となり告発しようとし若菜と村瀬にはずみで殺されたというのが真相。
そして恵美子も父親に性虐待を受けており、そのため殺人を犯したという真実を知る松本刑事は亜紀子を見つけられなかった悔恨もあり自身も子供がいるため深く同情し動機を隠す彼女を裁判から連れ出した。
さらに若菜も娘を溺愛し愛子は父を敬愛しながらも自分を犯す父を憎み、父との間に生まれた信也を弟として見守ることでバランスを保っていた。
その信也は恵美子を真剣に愛するようになって精神的に大人になり、愛子の役目はひとつ終わる。
さらに罠に利用される売春女子高生山倉由美子もなぜこうなったのかというと父親からの性虐待から逃れるために家出しているから。
まともな父が少なすぎる。
赤川次郎は娘やそれに近い存在と性関係を結ぶ男は結構書いていたが、被害者が仕方ないと受け入れる感じだったり恋愛として書いてたりするのできっちり虐待であると強めに非難して書いているのは珍しい。
性的に征服することで強いと勘違いする男たちを愛子が糾弾するが、信也や松本刑事のように優しかったり弱い存在を正しく守ろうと頑張る男たちもいるという台詞もある。
おそらくだが娘を性的玩具として見る男がこんなに社会に存在しているということを近年知ることが多くなり、今までみたいに物語としてさらっと書くことに赤川次郎としても抵抗があったのではないか、そしてそれを読者に伝えたかったんじゃないか。
私自身、創作で性的な暴力を書くときフィクションだと思いつつ被害者がこれを見たら困るし、現実としてはまったく肯定していないんだけどそうとられたらいやだという気持ちがわく。
現実が悲惨なフィクションを追い越していく。嫌な時代だ。
