ワタナベサトシ "一杯の珈琲から" 2025年12月9日

一杯の珈琲から
一杯の珈琲から
E.ケストナー,
小松太郎
ケストナーはナチ政権下で執筆を制限され、監視され、逮捕もされていた。そんな中で(ドイツ国外での出版ではあるが)3作の娯楽小説を書いている。『雪の中の三人男』『消え失せた密画』そして『一杯の珈琲から』。 本作は訳書のタイトルも二転三転している。『ゲオルクと突発事件(ゲオルクと予期せぬできごと)』、『小さな国境往来』、『ザルツブルク日記』など。ほかにもあるかもしれない。 没年1974年から50年とのことで、かつて創元推理文庫に収められていた小松太郎訳の2作品が中公文庫からあらためて出た。おそらく本書も近いうちに中公文庫から復刊されると期待しているのだが、カバーイラストが真鍋博の古書を見つけたので待ちきれずに購入してしまった。 ナチスに疎まれ、ヒトラーを激怒させ、生命の危機を感じつつも「戦争の真っ只中でドイツの目撃者でいること」を選択してかたくなに亡命を拒んだエーリッヒ・ケストナー。 『エーミールと探偵たち』などの児童文学者の印象が強いので、政治的な発言や、皮肉や、大人向けの小説、そして言論を封殺された中で書かれたこの軽い大人向けの3作品はけっして有名ではないかもしれない。ケストナーの人生の中の暗黒の12年間を思いながら読むと違うものが見えてくるような気がしている。
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