あんみつ "余命10年" 2026年2月21日

余命10年
余命10年
小坂流加
数年前、映画『余命10年』を観ました。 柔らかい描写で、何から何まで自分に刺さって感動と悲しみと愛情とで泣きました。 精神科入院生活の中ではやることがなくて、塗り絵か読書かご飯の生活。 違う本を読み終えて、次は何を読もうか考えた時に、『余命10年』を思い出しました。 本屋さんに在庫がなかったので、取り寄せて買ってもらいました。 小坂流加さんが登場人物たちに乗せて紡ぐ言葉、書かれている文章は優しく柔らかくあたたかく、終始誰かに包まれているようなそんな感覚でした。 病気とそれに伴う人生を描いたり、生死をテーマにしていたりする小説はたくさんあって、「大抵こういうオチなんだろうな」と予想ができてしまい、在り来りなオチに落胆してしまうなんてことも度々…。 でも、『余命10年』だけは、私の心に深く刺さって抜けない。 切ないとか、悲しいとか、泣けるとか、そんな在り来りな言葉で表してしまうのはもったいないというか難しいというか、そういう作品だなと思いました。 登場人物たちは辺に気取ったり、生死を考えすぎる不思議ちゃんだったりせず、その辺にいそうなごくごくありふれた人物像。 ありふれた一人ひとりではあっても、一人一人ちゃんとキャラ立ちしていました。 こういう人物像の設定もあり、『余命10年』の物語にぐっと入り込めたのかなと思います。 ヒロインの茉莉ちゃんを中心に色々な人物との関わりが描かれ、それぞれの想いやそのすれ違い、何もかもが心を震わせてくれました。 死の瞬間が描かれていないのも特徴的だなと思います。多くの作品では死の瞬間が描かれて、それが涙に繋がるように構成されている。それに対して、個人的には「はいはい、またこういう展開ね」と思ってしまうのですが、『余命10年』はその瞬間がない。それが私にとって心惹かれるところでした。
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