プラムディヤ・アナンタ・トゥールとその時代(下)

プラムディヤ・アナンタ・トゥールとその時代(下)
プラムディヤ・アナンタ・トゥールとその時代(下)
押川典昭
めこん
2025年8月28日
1件の記録
  • Sanae
    Sanae
    @sanaemizushima
    2026年1月18日
    これを読んでまさか泣くなんてことを想像していなかった。 スカルノ政権からスハルト政権へ交代、そして9月30日事件による反共運動によってプラムディヤはブル島へ政治囚として収監される。 この期間に書かれた『ブル島四部作』が日本でも有名で、これを読んでわたしはこの作家が好きになったのだが、どのように書かれたかという経緯が詳細に書かれている。 収監者は知識人でも農作業や建設など肉体労働を課されたが、ある時から執筆を許された。 インドネシアの植民の状態から独立へのストーリー、歴史小説を書こうにも、参考にする資料が収監されたところにはない。政治囚には届けてくれるあてもない。 しかし、作家と他の政治囚の中で読書共同体というべきものが成立していたそうだ。作者が仲間たちへ語り、作者に感想を述べる。事実関係についての誤りを指摘、それがまた作品作りに生かされる。 家族に宛てた手紙に書かれていること “みんなの親切は決して忘れない。彼らは遠くから、ときには10キロも離れたところから、わざわざバナナやパパイヤや魚を担いで届けてくれた。彼らのひとりひとりに恩返しすることはできないとわかっているが、それでも人として恩返しをしなければならない。”(p306) 究極の状況の中で政治囚同士が助け合い、気高い心を持った人々が大勢いたからこそ、世に送り出された作品でもあるんだなと胸を打たれた。 ジャワ語の丁寧体が7つにも分けられていて、このジャワ文化がインドネシアの権力体制を維持しているのではないかという作家からの示唆だったり、9月30日事件に対する適切な対応や謝罪についても、彼自身が被害者だということを差し引いたとしても、権力に阿らない、正義を追求する人なのだということがよくわかった。 だからこそプラムディヤを読んで多くの読者は胸を打つんだと思ったし、これからも何度も読み返していこうと思った。 上下合わせて1000ページ弱だったけど、全く飽きることなく読み続け、本当に本当に素晴らしい読書体験だった。
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