男と女が出会い、惹かれ合うようになるまで。時系列を遡っていくだけで、どうしてこんなに胸が苦しくなるのだろう。彼と彼女が出会った画廊。ブッラータ。井の頭公園のボート。まるで自分がそこにいたかのような錯覚を覚える。不在の喪失感は年月を経る毎にどんどん大きくなっていき、取り返しのつかないところまで膨らみ、事件は起きる。純粋にお互いを求めていた頃が懐かしく、とても遠い日々のように感じる。時間が経ったからではなく、心がすれ違ってしまった分だけ遠いのだと気付いて、もう一度胸の奥がしくしくと音を立て始める。

初めての井上荒野さんの本。 一気読みしました。 文章だけで長野の空気と東京の空気がこんなに変わるんだと分かるなんて、凄い。 やっぱりね、自分の気持ちを無視すると、色々なことが狂っていくのかな。

愛情はときに裏返るもの。