
ふじこ
@245pro
のろのろ読書
- 2025年10月9日
- 2025年10月7日女王様の電話番渡辺優読み終わったとある理由から不動産会社を退職した主人公は、メンズマッサージ店・ファムファタルで電話番の仕事を始める。推しの女王様・美織さんと食事の約束をするがドタキャンされ、彼女はそのまま行方不明になってしまう。めちゃくちゃに面白くて一気読み。愛とは?セックスとは?美織さんを探すという行為そのものが、アセクシャルである自分自身との対話になっていく。何気ない会話の一つひとつが本質をぐさぐさと突いてきて、問いがぐるぐると回り続ける。私もスーパーセックスワールドを思い切り謳歌して生きていきたい。
- 2025年9月25日
- 2025年9月25日アフターブルー朝宮夕読み終わった損傷の激しい遺体を専門に扱う納棺師たち。「だってみんな、自分の最期があんな姿になるなんて思ってないでしょ?」綺麗な状態で棺に収まるのは、決して当たり前ではない。自分の心の喪失と向き合いながら、ご遺体を修復していく。触った頬が冷たい描写に、心がざわざわと落ち着かなくなる。大切な人との別れは、ある日突然訪れるかもしれない。ならばせめて、お別れを言えるように心を尽くす。これからも生きていかなければならない人たちに寄り添い、そっと手を差し伸べる。悲しくてやさしい余韻に、心がぎゅっと掴まれる。
- 2025年9月20日長くなった夜を、中西智佐乃読み終わった38歳、独身、派遣社員。実家暮らしの環は幼い頃から両親の言うことを守り続けてきた。要領の悪い姉と、自由奔放な妹。ある日妹がシングルマザーとなって実家に戻ってきてから、環の生活は徐々に変容していく。読んでいて、息苦しさが纏わりついてくるようだった。のしかかってくるものを全て受けとめるみしみしという音が聞こえる。誰かに従い続けるのは楽だが、静かに確実にその人の心を蝕んでいく。摂食障害になり、体重は落ち、自身が潰れてしまってから初めて家族の異様さに気付く。長かった夜が、ようやく明ける。
- 2025年9月17日介護未満の父に起きたことジェーン・スー読み終わった元気と介護のあいだに介護未満がある。人はいきなり介護を必要とするのではなく、だんだんとできないことが増えていく。お金と決断力でグイグイ解決していくスーさんのエピソードは読んでいて爽快。大掃除をフジロックに見立て、イベンターとして全てをやり切る頼もしさが素晴らしい。80歳を過ぎてガールフレンドが絶えないミック・ジャガーことお父様、さぞかし若い頃からチャーミングだったのだろうなと想像する。家族からの細かい要求にどのような距離感とテンションで答え続けるべきか、とても参考になる一冊だった。
- 2025年9月12日
- 2025年9月12日
- 2025年9月4日おごさま小紫読み終わったボーイズバーにハマってしまった田舎出身のメンヘラ女子さあや。担当に風俗で稼いだお金を全て注ぎ込み、売掛を嵩増しされ、追い詰められたさあやは家に旧くから伝わる「おごさま」に助けを求める。クズがクズを成敗する因習村ホラー。映画『キャリー』を彷彿とさせる化け物系スプラッタ描写にゾクゾクさせられる。地雷系女子って普段こんなことを考えてるんだな、と文化人類学的な側面でも楽しめました。願いを叶えたいならやっぱり何かしらの代償が必要なんだね。
- 2025年9月1日水中の哲学者たち永井玲衣読み終わった哲学はもっと難しいものだと思っていた。永井さんの文章を読むと、哲学は日常と地続きになっていて私たちはいつでも対話を始められるということがわかってくる。あれ、これってなんでこうなっているんだっけ。そう思い始めたらもう哲学だ。なんで生きているんだっけ。なんで死が怖いんだっけ。水の中で哲学に潜る。どうして私たちは思考というものをするんだっけ。考えることは自分と対話することで、人と対話することは新たな問いに触れることだ。世界って、私が思っていたよりずっと楽しいところみたい。
- 2025年8月21日さみしくてごめん永井玲衣読み終わった哲学者である永井玲衣さんのエッセイ集。すごくすごくすごくよかった。彼女が日々感じていることがスッと身体に染み込むように入ってくる。クスッと笑えたり、哲学対話を通して子どもの発言にはっとさせられたり。あるとき急に哲学に引き込まれてしまうことを、永井さんの言葉で「哲学モメント」というらしい。私にもたまに哲学モメントが起きる。急に宇宙に放り出されてひとりぼっちのような気がしていたけど、本書を通してたくさんの星が瞬いていることを知った。この本に共鳴してくれる人がいる限り、私はひとりじゃない。
- 2025年8月19日西の魔女が死んだ梨木香歩読み終わったタイトルの文章から始まる物語は2年前の1ヶ月間を回想する形で語られていく。不登校になってしまった中学生のまいは、両親の元を離れておばあちゃんの家で過ごすことに。自らを魔女と呼ぶおばあちゃんに教わりながら、まいは魔女の修行を始める。学校に行きたくない毎日を送っていたあの頃の私に、今すぐ届けてあげたい。なんでもない日々は、時間が経つにつれてかけがえのない思い出へと変わっていく。おばあちゃんの愛に涙がぼろぼろと溢れてくる。私も精神を鍛えていつか魔女になりたい。自分で決めて、やり遂げる魔女に。
- 2025年8月4日へびつかい座の見えない夜砂村かいり読み終わった収集癖のある人たちを描いた短編集。自分のためだけに何かを集めたい。誰にも見せることのない思いはキラキラと静かに輝く。他人から見て価値のないものであるそれは、ぞんざいに扱われたときに心ごとぐしゃりと潰される。表題作と『ハマエンドウが咲いていた』がお気に入り。田舎特有の息苦しさと、誰にも迎合しない同僚への羨望が繊細な筆致で描かれる。役割に自分を当てはめるのではなく、自分がなりたい姿に変わっていく。表題作のラストシーンの美しさに息を呑む。誰かが望む私ではなく、私が望む私でありたい。
- 2025年8月1日52ヘルツのクジラたち町田そのこ読み終わった家族に虐待され、かつて祖母が住んでいた町に移住してきた貴瑚。海辺の町で出会った少年は「ムシ」と呼ばれていた。人の優しさ、不器用さ、たくさんのものがぐちゃぐちゃになって私の中に雪崩れ込んでくる。苦しみを訴えることができない人はたくさんいる。孤独を知っている人は、時に誰よりも強くなれる。貴瑚の最後の選択は、きっと彼を救ったのだ。誰かに救われた人は、別の誰かを救うことができる。クジラが魂の番と泳いでいく。52ヘルツの声が聞けるクジラに、私もなりたい。
- 2025年7月31日
- 2025年7月17日模倣犯 (五)宮部みゆき東京の下町でOLが行方不明になり、その10ヶ月後に公園から切断された女性の片腕が見つかる。連続誘拐殺人事件は、やがてメディアを巻き込む劇場型犯罪へと発展していく。多くの登場人物たちによる心理戦に夢中でページを捲った。クライマックスで模倣犯というタイトルの伏線回収がされ、さまざまな感情が自分の中に流れ込んでくる。真相がわかっても、誰も、犯人さえも救われない。誰かがいなくなれば、それを悲しむ人がいる。殺されていい誰かなんて、ひとりとして存在しない。人は、誰もが生きているんだという当たり前のことを思い出す。
- 2025年7月9日ルック・バック・イン・アンガー樋口毅宏読み終わった実在するアダルト本出版社をモデルに書かれた群像劇。傷ついて、傷つけられて。血を流さないと雑誌を作ることができなかった、あの頃の不器用な男たち。どこまでがリアルで、どこからがフィクションなのか。『凡夫』と合わせて読むと異常さと恐ろしさがより現実味をもって迫ってくる。樋口節に翻弄され、酩酊状態のまま一気に読み切った。男も女も、必死に今を生きていた。本作に書かれていることが生きているということならば、私はまだ今を生きることができていないのかもしれない。
- 2025年7月3日爆弾犯の娘梶原阿貴読み終わった映画『桐島です』の脚本家が自身の半生を綴ったエッセイ。彼女の父も爆弾犯として指名手配され、逃亡生活を送っていた。父を匿うため、少女の日々はたくさんの嘘に塗り固められていく。登下校の際は交番の前を避けて通り、ボストンバッグには大事なものを入れていつでも逃げられるようにしておく。重い話をさらっと書いているところに彼女の防衛本能が透けて見えて、胸が苦しくなる。最後、梶原さんの言葉を読んで自然と涙が流れた。幼い頃の私はこうやって抱きしめてもらいたかったのだ。今度『旅立ちの時』を見よう。
- 2025年7月2日銭湯福田節郎読み終わった酔っぱらいの夢の話をずっと聞かされているような、真面目に聞かなくてもいいのになんだかんだで最後まで付き合ってしまった。全ての受け答えが適当で、でも人の話なんてそんなにちゃんと聞かなくても世界はどこまでも続いている。バツイチ男の哀愁と中途半端な諦念はぐだぐだと身体に纏わりついてくるようで始末が悪い。でも、長い人生の中で時には同じところをぐるぐるすることがあってもいい。ぐるぐるしていたらいつの間にか知らない場所にたどり着いている、そんな旅がしたくて私は本を読んでいるのかもしれない。すべてを捨てて僕は生きてる。
- 2025年6月26日
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