森の人々

3件の記録
ni@nininice2026年3月9日読み終わったこの本の帯には、「ある科学者が目撃した熱帯の島の悍ましい成人儀式、そして食すと不老不死になる幻のカメ」「実在の科学者をモデルにしながらも、作家独自の世界観を圧倒的筆力で描いた話題作」とある。 しかし物語はまず最初に、そのノーベル医学賞受賞歴のある主人公が、性的同意年齢未満の子どもに対しての強姦、性的暴行、児童虐待の容疑で逮捕された、という報道記事から始まる。(この主人公に実在のモデルがいるのだ)昨今のニュースを自ずと思い出す。 以下、ネタバレにご注意下さい⚠️ ・ ・ ・ ・ ・ 主人公ペリーナ博士の自伝という形で綴られている物語の全ては、主観的で彼の都合の良いように語られていること、それを更にペリーナ博士の信奉者である助手の手により編纂されていること、つまり何一つ信用できないということ。そのような意図で書かれた作品として読んでいた。両親について、双子の兄について、美しい仕事仲間タレントについて、女性調査員について、ジャングルや森について、そこに住む人々について、長寿の研究について、養子にした子どもたちについて、そして逮捕容疑の真実について。 最近読んだ、C.ブロンテ『ジェイン・エア』の中で一番印象的だった一文が何度も頭に浮かぶ。 〈美は、見つめるものの目のなかにある〉 全ての事象は主人公の見つめる目を通して描かれており、美しいもの、汚いもの、悍ましいもの、記されていることに何一つ信頼が置けない。そもそも小説とはそのようなもの、なのだろうが、最近自分が益々疑い深くなっているので、この作品は特に懐疑的な読書体験となった。 物語にはいくつか謎めいた事柄があって、帯に書かれている未開の地の生活や神秘や自然環境はその大部分ではあるのだけど、冒頭に主人公に対する罪の容疑が挙げられている為、結局この人物が有罪なのか、冤罪なのか、というスキャンダルの方が気になってしまい、さっさと読み進めてしまった。 去年から、未開の地や島に西洋人がやって来て、その地を欲望のままに荒らし、現地の人々や生き物に多大なる影響を与え、お金や利益になりそうなものを全て奪った後に、去ってゆく、という内容が含まれる本を立て続けに読んでいて、この『森の人々』も当然そのカテゴリに当てはまる。そこにどんな理由や言い訳があったとしても、人間の欲深さ、が根底にあり、自分も含め人類は絶滅した方が地球の為だとまた思う。 ところで、この作品には主人公を含め何人かの印象的な登場人物がいて、その中で女性は主人公の母親と仕事仲間エスメの二人のみ。そして残りの男性たちは殆どが同性愛者だと思われる。これも、主人公の目を通して見ている世界、だからなのかだろうか?それとも何か意図してのことなのだろうか?