黒と茶の幻想(上) (講談社文庫)

黒と茶の幻想(上) (講談社文庫)
黒と茶の幻想(上) (講談社文庫)
恩田陸
講談社
2006年4月15日
1件の記録
  • 咲
    @lunar_mare
    1900年1月1日
    「過去」の中にこそ本物のミステリーがあるのだ。時間に、記憶に、街角に、蔵の隅に、音もなく埋もれていくものの中に「美しい謎」がある。我々は過去を取り戻すために旅をする。 この旅のテーマは「非日常」。サブテーマは「安楽椅子探偵紀行」。4人の男女が集まる。Y島を歩く。しきりに喋る、喋る、喋る。日常会話ではない会話をする。 今まで見た映画で何が一番好き?−長谷川和彦の「太陽を盗んだ男」。結婚する前に相手に一つだけ質問できるとしたら?何が起きても、私のことを理解しようとしないでくれますか。一番怖い物は?紫陽花。 ただ、森の中を4人で歩くだけ。歩く。話す。食べる。飲む。眠る。日常から離れたところで、いくら話しても何も変わらない過去を、謎を、ただ話し、考え、解いていく。 「森は生きている、というのは嘘だ。いや、嘘というよりも、正しくない、と言うべきだろう。森は死者でいっぱいだ。森の中には生者と死者とが混在している。足元には死者が堆積し、木々の梢からは赤ん坊の笑い声が降る。気の遠くなるような時間の蓄積を目の当たりにして、我々は森に圧倒され、畏怖を覚えるのだ。」 寛いでいる人間を前にして感じる気まずさや気後れはなんだろう。 西へ、西へと移動をしながら読んだのだ。暑いと聞いていたものだから、覚悟して薄着で行ったところ、どこもかしこも冷房で、かえって寒かったことが、肉体に刻まれた印象だった。飛行機で、電車で、読んで読んで読んで。歩いている人たちを読みながら、私はただ座って、凄い速さではるばる遠くまで運ばれてしまったのだった。移動した先で何もしないで過ごす。1日中本屋にいた。 ただ、1週間ずっと、本を読んでいた。
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