1兆円を盗んだ男

2件の記録
yomitaos@chsy71882026年1月8日読み終わった@ 自宅目の前で溺れているひとりの子供を助けるより、将来低い確率で起こる災害で命を落とす大勢の人を助けること、そのために大金を稼いで寄付する。それは一見間違っていなそうだけれど、何か人間として、大きな欠陥を抱えているように感じられる。 この社会で生きていると、測定できないことは無価値なんだろうかと途方に暮れることがある。測定できないのは計測する側の能力や技術が不足しているだけかもしれないし、そもそも計測できるものに必ず価値があるわけでもない。追い続ける指標が、ただ計測しやすかたっただけという、それこそ無意味な設定であったこともある。WEB企業に長く在籍している自分には、それが実感としてある。 禁錮25年という重罪を課されたサム・バンクマン・フリードは、効果的利他主義という歪んだ思想のもと、マネーゲームで得た利益を寄付に回していたが、その額を正確に把握していないし、それによって何人を救えたのかも分かっていない。 溺れた子供は体温のある生きた人間だが、確率上存在する犠牲者の数は、ただの数字でしかない。データベース上のその数字が増えていればそれで良しというのは、本当に世の中を良くしていると言えるのだろうか? 本書では莫大な金が動いていく様を克明に描いているが、カネを持ってる人がさらに潤っているだけで、世界は少しも良くなっていないように思う。いま世界を席巻している効果的利他主義者のふるまいが、心底気持ち悪くて吐き気がする。
