皇国の守護者(9)

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- ちゃそす@1000book_zautusu2026年2月28日読み終わった28〜36冊目(9巻まとめ)。 皇期五六八年。「帝国」は皇国北領奥津湾に来襲し、皇国軍30,000人がこれを迎え撃った。しかし皇国北領鎮台は壊走、内陸への撤退を開始する。 そんな最中、独立探索剣虎兵第十一大隊の将校である新城直衛中尉は遅延戦闘の任を預かることとなる。 後に救国の英雄と語られた新城にとっての初めての戦争は「皇国」の敗北から始まった。 本作は作者が亡くなったことにより未完である。幸いにも展開としては区切りの良いところで終わっているが、一部のキャラクターの描写が途中だったので、その点は気になる。逆賊を誅殺した丸枝中尉はその後どうしたのだろうか。樋高はこれからうちに秘めた暴力性をどう発揮していくのだろうか。 話の構造は割と単調で、基本は戦争で成果を残す→帰還して国内の政治に翻弄されるの繰り返しだ。その中で、新城は英雄としての素質を徐々に開花させていくこととなる。 初め、この本がジャンルとしてはライトノベルとして扱われていることを知って「え、こんなに描写も細かくて重厚なのに?」と思ったが、読み終わった今改めて考えると確かにラノベのような一面があると感じる。 同期が皆理由もなく有能であったり、一部の女に盲目的に好かれる、上司が無能など、ご都合主義的な展開が見受けられる。中でも違和感が強かったのは女性の描写だ。 ユーリアが新城に体を許したところまではある意味彼女の潔さによるところだと理解できたが、なぜ個人副官に嫉妬するほど新城に惚れているのかがわからなかった。新城への好意はあくまで軍人としての彼へ惹かれたものであり、興味関心の延長線上にある感情だと思ったが、突然生娘のような恋心を新城に抱き始めたのが唐突に感じられた。 同様に、一部女性の描写が偏っている点が気になった。愚かで、男の陰に隠れ、時に男を操る存在としての女性が作中にあまりにも多い。戦時中であればむしろ男手のない中で家庭を支える強い女性がいて然るべきな気もするが、そういった人物は表れない。 唯一新城の同期の1人である槇の想い人は商家を切り盛りする優秀な女性であったが、説明したがりな作風にしては妙に描写が少なかったことからも、作者の思い描く女性像に偏りがあるのを感じた。 初めはなんの疑問も持たずに読み進めていたが、途中からのご都合主義と視点切り替えの多さ、舞台装置のように各視点が進んでいく構成が気になってあまり物語に集中できなかった。 なんだか文句ばかりになってしまったが、ご都合主義な点はあるものの、主人公はちゃんと苦労もするし負ける時は負けるので、戦記として読みごたえがあった。軍隊の細やかな描写は臨場感があってリアルだし、セリフや言い回しは最高にクールだ。新城の戦争に対する歪んだ好意が本作の一番の魅力だろう。 「つまり我々はこの負け戦を単独で支える英雄となるわけだ。楽しいぞ 軍人としてこれ以上の名誉はない」