新書772ゴーストライター論 (平凡社新書 772)

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いるかれもん@reads-dolphin2026年2月21日読み終わった学び!おすすめ「ゴーストライター」と聞いていい印象を持つ人はいないと思う。私もそうだったし、この本も、出版業界の闇を暴くみたいな話かと思って手に取った。 しかし、実際に読んでみたら全く想像と違う本で、ゴーストライティング、さらにはライター業の喜びやテクニック、ライターとして働く上で注意すべきことなど、読みやすくまとめられていていい意味で裏切られた。 ゴーストライティングとは、著者へのインタビュー、調査、周辺取材などを重ね、著者の言葉や考え、伝えたいことを幅広い読者に届くように文章にしていくことである。それは決して簡単なことではなく、高度な技術が必要であるし、ときには著者本人が自覚していないような人格などを掘り起こす喜びがあると書かれている。私は、別にゴーストライティングの経験があるわけではないが、会議の議事録とかまとめる作業を思い出すと、単に発言を文字起こしするだけでは不十分で、発言の意図が明確になるように分かりやすく、読んでいて違和感ない形にまとめるのは結構難しい。 実際に出版された本について、その出版過程が詳しく紹介されている点も面白かった。『矢沢永吉激論集 : 成りあがり』の企画から出版までの流れ、ライターではなくコピーライターの糸井重里が執筆した理由や、普段本を読まない人でも読みやすくするための工夫など「へぇ〜」って思った。 他にもライター業を行う上で役に立ちそうな具体的な話が多く、トラブルを回避するために大切なことや、契約書の例なども掲載されている。 そして、この本を通して著者が最も伝えたかったのではないかと感じたことは「ゴーストライティングからチームライティングへ」ということだと認識した。世の中に対してかけがえのない価値を持っている著者、それを構成して内容を研ぎ澄ましてわかりやすく文章化できるライター(=現状のゴーストライター)、このチームをしっかり支え著者の主張を「商品化」することができる編集者が揃うことで、各々の力だけでは生まれない素晴らしい書籍が生まれる。それは「チームライティング」として考えるべきである主張だ。別に私はライターではないけれど、仕事で執筆をしていると「チームライティング」というものは強く感じる。たとえ、私の単著であっても、私がその原稿の全てをコントロールできるわけではなくて、さまざまな人の確認を得て原稿がブラッシュアップされていく。多分、世の中の出版物の多くはそのように、多くの人の力でできているだろうから、「チームライティング」の考え方が認められることは、そこに関わる多くの人の権利を守るためにも必要だと思う。 ちなみに、最近は「構成」などという形でライターがクレジットされることも多いとのこと。ためにし本屋のビジネス書コーナーで何冊か奥付けを確認したら結構「構成」という役割表示が多かった。多分、想像以上に世に中の本はゴーストライティングによって書かれているのだと思う。 まとめると、ライターに興味がある人であれば、その喜びも、実際も、ライター業として収入を得るためのコツもよくまとまっているので大変おすすめ。