

いるかれもん
@reads-dolphin
使い方悩み中。小説よりもノンフィクションやエッセイの方が読む割合としては多い。図書館で働いてます。
興味 : 自然科学、図書館情報学、ケア
- 2025年10月4日わたしを離さないでカズオ・イシグロ,土屋政雄読み終わったまた読みたい高校の図書館で国語の先生のおすすめ図書として紹介されていて、買った気がする。以来10年以上も時々読もうとして、結局辞めてを繰り返した我が家でも随一の積読本。ついに一読した。大事なことがさらっと書かれていて、気を抜くと読み飛ばしてしまいそうになる。翻訳ならではの文体に多少苦戦してしまったのでどこかで読み返したい。
- 2025年9月28日
- 2025年9月28日読み終わった学び!「自分は大きな夢とか目標とか、自分を突き動かす衝動とかないなぁ」なんて悩みを漠然と抱いていたので読んでみた一冊。とても丁寧に議論が進められており、また、各章の最後には、これまでのまとめみたいな項目が毎回つけられていて読みやすかった。(最後の方は少し抽象的で難しかったけれど。)で、結局読んで思ったのは、私は十分衝動に駆られて人生のレールを外れて今の状態に落ち着いていると感じた(笑)。本の終盤でどうやったら衝動が自己に取り憑くのかという議論をしているが、多孔的な自己とか、試しに世界に働きかけることで何かが返ってくるとか、実は私なりの生活のコマの進め方に近いと思う。あと、衝動と計画性についても、その場その場で目的とか計画は持っているみたいなことを書かれていて、「あぁ、そうそう」となった。この本は衝動を幽霊というメタファーに置き換えて議論を始めているけれど、私にとっては本当に幽霊のようで、取り憑かれている事にも気が付かなかった。
- 2025年9月27日読み終わったまた読みたいうまくまとめられないけれど面白かった。 序章で書かれている通り「他者といる技法」について、第1章では「思いやりとかけぐち」、第2章は「子の存在によって母は初めて母になる」といった相互の存在証明、第3章は外国人、第4章はリスペクタビリティ、第5章は自己啓発セミナーとそれを非難する語彙といったさまざまな観点から論じている。それぞれ独立しているので気になった論考から読んでも面白い。そして第6章は「他者を理解する」ということの葛藤について述べてまとめられている。初めて社会学という分野の本を読んだけれど、身の回りの事象を丁寧に考察していき理論を立てていく流れが読んでいてとても楽しかった。私の好きな学問かもしれない。最後の解説で各章の内容がまとめられているのでそこを立ち読みしてもらってもいいかもしれない。
- 2025年9月21日
- 2025年9月14日人間の条件ハンナ・アーレント,千葉眞また読みたい図書館本これまでに読んできた様々な本で言及されてきたため、ぜひ一度読んでみたいと思ったら最近新訳が出たということで本屋でチラチラみていたところ、図書館の新着図書で見つけて他の人に取られる前にと借りてきた。最初から読み通せないだろうと思っていたが敢えなく撃沈。序文、イントロ、プロローグ、第1章と第2章の途中まで、あと訳者の解説とあとがきは読んだ。読んだけど、序文とかイントロなどの解説的なパートでモロに「この本は難しいですよ」みたいなことが書かれていたのでちょっと読めなくてもまぁしょうがないかという気持ち。どうやら人間の基本的条件として「労働」「仕事」「活動」というのを挙げていて、この「活動」がなんだか重要そうな感じ。。。訳者のあとがきとか解説とか読むと、いや、難しいけれど言いたいことはなんか私にしっくり来そうな、、、複数性とか重要みたいだし….. あらかじめこうなるだろうとアレンとの解説(新書)などを購入してあったのでそういうのを読んで出直したいと思います。
- 2025年9月10日ふたりの世界の重なるところ渡辺由利子読み終わった学び!また読みたい職場の人に紹介された一冊紹介される際に見せてもらった、自分の気持ちを整った文章にする過程で本当に自分がかきたいものががその文章の中から消えていってしまうという趣旨の文章が印象的だった。(その時私は丁度渡邉雅子『論理的思考の文化的基盤』を読んでいた。この本は各国の作文教育における作文の型を比較するような本であり、まさに文章の整え方について論じている。職場の人と、「正反対の本ですね」と談笑した。ただし、当然、どちらの本もそれぞれの価値があり、互いの主張を非難し合う関係にあるけではない。)その時からぼんやり気にしつつ、たまたま本屋で見つけたときは顔追うか迷ったこともあった。しかし、本書の主題の主人公であるジネヴラ・ボンピアーニはもちろんのこと(ジネヴラに関しては日本ではさほど著名ではない)、もう一人の主人公で著名な哲学者のジョルジョ・アガンベンも名前を耳にしたことがある程度である。イタリアについても、何か知っている訳でも、調べたことがある訳でもないため結局読まずに本棚の前を何度か通り過ぎた。しかし、ある時ふと本書について調べていると、とあるポットキャストに著者の渡辺由利子さんが出演されているものを見つけて聞いてみた。その時の著者の柔らかい話し方と、謙虚で素直な執筆に対する姿勢や、パーソナリティの本書に対する感想を聞いて、「この人の書いた本なら読んでみたい」と思い図書館から借りてきた。カバーもない、比較的簡素な作りの本。ページ数も180ページほど。明朝体で書かれたタイトルと著者名、少し模様が浮かぶ静かで落ち着いた表紙が印象的な一冊である。たくさんの文献にあたって時間をかけて丁寧に書かれたことがわかる。一方、専門書のような重々しさはなくてずっと身体に入ってくるような柔らかい文章が魅力的だった。紹介される際に見せてもらった書くことについて書かれた部分が印象的。「正しい文法、正しい語順の範囲でしか感じることができなくなってしまう」という言葉はみにつまされる。じっくりまた読み返したくて結局本屋で買ってしまった。手元に置いておきたい一冊。
- 2025年9月5日津波ジェイムズ・ゴフ,ウォルター・ダッドリー,千葉敏生,河田惠昭読み終わった学び!また読みたい地質記録や伝承などから、世界各地の津波について書いたサイエンスノンフィクション。翻訳だけどとても読みやすい。津波と聞くと地震による津波ばかり思い浮かぶけれど火山噴火、海底地滑り、山体崩壊などさまざまな要因による津波について書かれている(リツヤ湾の500m超えの津波とかインパクト抜群)。実は日本の津波については章立てて取り上げられているわけではないけれど随所に登場する。日本が防災先進国なだけに国内のことばかりに目を向けがちだけど、海外の人が書いた津波も新鮮で面白かった。地学好きなら多分楽しく読める。図書館で借りたけど、スピンが真ん中ら辺のページに綺麗にたたまれていて、前に誰も借りた形跡がないのが残念。なら私にちょうだいとか思う笑
- 2025年8月30日英語と明治維新江利川春雄読み終わった学び!英語(というか外国語)を軸に明治維新前後の日本の変化を政治・経済などのハード面、文化のソフトの両面から描き出す。前半が主に幕末から明治維新に至る日本の開国について整理されている。歴史に疎い私でもスラスラ読めるほどわかりやすく整理されている。幕府側も積極的に海外に使節団を派遣するなど、西洋の文明を取り入れようとしていたとは全く知らなかった。後半は日本の近代化に伴い社会全体に英語、フランス語、ドイツ語などが普及していく様子が描かれている。(逆にオランダ語が衰退していく様子なんかも。)外国人教師が大学にいたことや、英語で授業を行われていたことなどはなんとなく知っていたけれど、ドイツ語、フランス語、英語がしのぎを削っていたことなどは知らなかった。日本語についても国の標準的な国語を整えていく段階で、英語などの外国語の影響を受けていると知って新鮮だった。単に外国語を既存の日本語に置き換えていったというわけではなくて、日本語のあり方もその中で変容していった様子が述べられている。なんか、なんとなく日本っぽとか思っているものでも、外からの影響を内包して、それが次第に馴染んでいって、いつの間にかオリジナリティとか「らしさ」になっていうのだと凡庸な感想だがそう思った。まだ、今ほど情報の入手が難しい時代に必死に外国語を勉強して、外に飛び出した人たちがいて、そうした人たちの力で社会が変化していったと考えると、飛躍のためには文字通り勇気を持って外に出て学ぶってことが大切なのかなとか思った。 とりあえず英語を勉強しようとモチベーションは高まった笑。そう思って図書館で洋書とか語学書を眺めていたけれど、どの本を読んでも挫折しそうでどうしようかと思ったが、この本の中で、ある程度文法が身に付いたら自分の興味ある文章を辞書を引きながら読むのがいいって書いてあったので、家にある大学院時代の洋書の教科書をまた読み直すところから始めようかなと思う笑 本の話に戻るけれど、幕末から明治までの変化を外国語という軸でソフト・バード両面から、私のような素人にもわかりやすく読みやすく、そして簡潔に整理されていてすごい本だと思う。あとがきにも書かれていたけれど、著者は大学で経済学、大学院で英語教育を学んだらしい。その後英語教育の研究者になられた方だが、そうした著者のバックグラウンドあってこそのオリジナリティあふれる一冊だと思う。ぜひこの著者の他の本も読んでみたいし、もう一度外国語を勉強したい。
- 2025年8月26日明るい部屋新装ロラン・バルト,花輪光読み終わった学び!また読みたいちょっと前から気になっていて読んだけれど難しかった。。。 もう少し落ち着いて読み直したい。 ただ、部分部分とても納得がいく記述があって、特に写真の本質として提示された「それは=かつて=あった」ということはかなり強固な考えだと思うし、そうした強固な考えを丁寧に見出していくという展開は私が好きなタイプの本。わかっていないかもしれないけれど。写真論と現象学を学んでから再挑戦したい。
- 2025年8月24日日本の統治構造飯尾潤読み終わった読みやすいし面白いけど、民主党政権誕生前の本。今の状況まで踏まえたアップデート版をぜひ呼んでみたい。まだ整理しきれていない。 今まで社会科学の本はあまり手にしてなかったけれど公務員になったし基礎教養として一通り知っておきたい。
- 2025年8月12日学び!読み始めた「私は「病理」や「弱者」を生む「社会」のなかにいて居心地の良さも悪さも両方感じており、その「社会」から「私」をぽっかり抜いて私がいない「社会」を問うというふるまいが、ひとつには、「私」と「社会」の絡み合った関係を誠実に問うておらず、もうひとつには、それを問わないことには、私がいま苦しんいる微妙な苦しみにとってなんら有効な答えが得られない、このふたつのことをよく知っているのだ。 「改革者」でも「弱者」でもない立場にいる人々に有効な「社会学」。私は、このような立場から出発する「社会」への問いを構想しなければならないと考える。「社会」から利益も違和よ受け取っている人々の現実を切り捨ててしまわないような問い。そのような立場の人々が感じる違和(と利益)をていねいに言葉にするような問い。」 自分が疑問に思っていたことを、とても鋭くストレートに言語化されてしまった。私にとってこの問題は雲を掴むようなものであるけれど、それを丁寧に、時に鋭く掬い取ってくれるような期待感がある。にしてもカッコで囲まれた言葉が多い。この一つ一つをこれから疑っていくのかと思うと、なかなか熱い展開になりそうな予感。読み応えありそう。読み進めるの楽しみ。
- 2025年8月8日こんなとき私はどうしてきたか中井久夫読み終わった学び!中井久夫2冊目。『治療文化論』よりはずっとわかりやすかった。病院での研修の講義録ということで、また文章の雰囲気とか『治療文化論』とは大きく違った気がする。内容もタイトルの通り、著者自身の経験を語るような形だった。書かれていることがかなり具体的。暴力を振るう患者の抑え方とか、壁の色とか、流す音楽とか…この本読んでパレストリーナを聞いたりした笑。相変わらず、語りに、なんていうんだろう、「ぬめり」みたいなものを感じた。掴めそうで掴めないような、でも、別に悪い心地じゃないんだよね。あと、大切なことはやっぱり小さい字で書かれている。中井久夫はまだ2冊目だけど、なんかもっと味わえるようになりたいなとか思ったりする。
- 2025年8月3日治療文化論中井久夫,江口重幸読み終わった学び!また読みたいなんとか一通り読んだけどまぁ難しい…(5回目くらいの挑戦) 難しかった要因を考えてみると…、私の人文科学への基礎知識の不足、日常的にあまりみらことがない単語が多いなど考えられるけれど、何よりも読んでいて全体の構成が全く見えずどこに連れていかれるのかわからない感じ、そしてなんの前触れもなくいきなり話が飛んだりするところなのかなぁと思う。あとがきとか読むとどうやら中井先生の著作の特徴らしい(本人も、教科書とか書くの向いてないと言っている)。でも逆にこういう癖のある本も悠々と読みこなして楽しめたらいいなぁとも思う。ちまちまゆっくり読み返そうかな…他の中井先生の著作を読んでから再挑戦した方が良さそう
- 2025年7月29日
- 2025年7月22日「論理的思考」の文化的基盤渡邉雅子読み終わった学び!図書館本同著者の新書『論理的思考とは何か』を読み興味を持ったため図書館で予約して借り出してきた(初めて予約で2、3ヶ月待ったかも知れない。) 本書の主要な内容は新書の方にも書かれていたような印象。でも、やはり専門書であり一つの研究書としてまとめられている。そのため前提となる社会学の概念の説明から、研究手法等についてもかなり詳述されている印象。この部分は、本書のメインとなる部分ではないともうが、社会学の専門書を初めて読んだ私にとっては新鮮な内容だった(でも、急いで読んだのでここは読み直してから図書館に返却したいところ。)また、新書の方が、異なる論理的思考(多元的思考)の方法を使いこなすことが重要であるというメッセージがわかりやすく、前面に押し出されていた印象がある。一方、内容面で新書には書かれていないものは各国の歴史の語り方が推論の型に結びついているという部分である。ここも、読み飛ばしてしまっている気もするので読み直したい。 本書の最後の方にも書かれていたが、この本の重要なポイントは、異なる論理的思考の型を価値目的-技術目的, 体型知-経験知の2つの座標軸からなる4象限に位置付けて整理したことにあると思う。本書や新書が主張するようにこれらの異なる思考の型を身につけていきたいと思っているところだが、その具体的な方法等についてはいずれの本も詳しく示されてはいないという印象であり、これからの研究の成果やその発信に期待したい。
- 2025年7月15日子どものための精神医学滝川一廣読み終わった学び!感想(また書き直すかもしれないけれど、読み終わった直後の気持ちをそのままぶつけて書いてみる) 途中図書館から借りた本を読んだりしてたので読み始めてからだいぶ時間が経ってしまった。また、レビューは詳しく書きたい。宣言通り素手で読める一冊。今まで他の本で読んだこともトピックも多いけれど新鮮な気持ちで読めた。おそらく、子どもの発達の全体像を示し、その中での各精神障害の位置付けを示しながら書かれるという構成と、みずみずしい文章のおかげだと思う。「関係の発達」と「認識の発達」の2次元平面で子どもの発達を考えるという、その考え方を知れただけでも十分な価値がある。 あと、発達におけるマザリングの役割についてとても面白かった。乳幼児の表情は、実は何か感情の表れではないけれど、周囲の大人がそこに感情を見出すことで子ども時の情緒が発達するらしい。子どもの感情を大人が正しく読み取れているとか、実は勘違いとかそういうことではなくて、「子どもが喜んでいる」と直感し、それに応答することが大切というのはなかなか示唆的。実は直感で素直に反応するって大切なのかもね。 他にも社会性の話などについても目から鱗だった。 専門書で、ページ数は460ページと、なかなか分厚くて手を出そうとは思えないかも知れないけれど、読みやすくて、面白いこと間違いない。間違いなく名著だと思う。 是非是非多くの人の読んでほしい。読み継がれてほしい。私もまた読み返したい。
- 2025年7月12日性格診断ブームを問う小塩真司読み終わった学び!岩波ブックレットインターネットなどで気軽に受けることができる、性格診断(特にMBTI理論という理論に裏付けられていると言われている16 Personalitiesを中心に)の危うさについて、パーソナリティ心理学の研究者が書いた一冊。第1章は本家MBTI理論を紹介した上で16 Personalitiesがそれによる診断とは別物であることを紹介し、第2章ではなぜそれを楽しいと感じるのかについて解説していない。 しかし、本書の特徴は最後の第3章にある気がする。本章では、その楽しさを疑うということをしている。私自身もなんだかんだ16 personalities受けたことあるし、そういう話を楽しいと思うことがある。でもその上で「まぁ、話題になれば良い」とか「一つの参考に」みたいに、「そこまで信じていませんよ」みたいな言葉の保険をかけながら楽しんでいた。ただ、正直、そうやって言葉の保険をかけておけば良いやみたいに思っていた。しかし、果たして自分は何に言葉の保険をかけているのかハッキリしていなかったと思う。 さて、本章にはこんな一節がある。 「性格診断というものは、そこまで絶対的なものではないからこそ、楽しむことができるということになります。確かに、「遊び程度」で楽しむことは可能でしょう。しかし一方で、ここまでに説明したように「楽しいのはなぜか」を少し考えてほしいのです。その楽しみの中に、曖昧な結果に対して同意を得て、自分が思っていることを確証し、そのうち重要な決定のよりどころにしてしまうようなプロセスは存在していないでしょうか。」(p.61) 本書の主張はこの一説に集約されている気がする。私自身、「楽しいのはなぜか」を考えることで、自分の中でブラックボックス化してしまっていた言葉の保険をもう少し明確なものにできる気がする。読み終えて思うのは、詰まるところ性格診断は都合のいい言い訳にしやすいから危ないのかなと納得している。 多分、性格診断ブームはこれからも続くと思うしそういう話題をしてしまうこともあると思う。でも、頭の中にこの本から学んだことを置いておいて、たまに取り出して振り返りながらほどほどに付き合うのが良いのかなと思う。 たびたび発信しているが、岩波ブックレットはどれも大体50ページくらいで2時間程度で読み終えることができる。内容も読みやすくて、新書に不慣れな人や、中高生にもぜひお勧めしたい。本書もその一つであり、ぜひ興味を持った方は気軽に手にしてほしい。最近本の値段も高騰しているけれど、本書は680円。多分ランチ一食より安いのでは?笑。是非是非お勧めです。
- 2025年7月11日子どものための精神医学滝川一廣学び!読んでる本当は読み終わったらレビューとか書こうと思っていたけど、忘れないうちに書けるところ書いておこう笑 子どもの発達について大学の講義もとったりしてて何度か勉強したことがあったけれど、これは今まで読んだどの本よりも面白いしわかりやすいし、スッキリしている。400ページを越えるなかなか分厚い本ではある(まだ200ページくらいしか読めていない)けれどグイグイ読み進められる。他の多くの本はおそらく「自閉症」とか「学習障害」とかみたいに病名ごとに解説されていく形式だと思われるが、この本は全然違う。まず、子どもの発達について「認識の発達」と「関係の発達」という2つの軸を張り、この2次元空間の位置から様々な子どもの精神障害を論じていく。だから、多様な話題を扱いつつもスッキリと理解できる(気がしている)。この考え方を知ることができただけでも十分価値があったと思う。もし興味ある人は是非読んでみてほしい。
- 2025年7月10日「好き」を言語化する技術三宅香帆読み終わった学び!感想文章の書き方とか、言語化について書かれた本の感想とか書くのって緊張しますね。でも、こういう本の感想とかを魅力的に発信したいと思って手に取った。 著者は「好き」を言語化するために必要なのは語彙力ではなくて、細分化であると主張しており、その方法が書かれている。細分化とは、「好き」「ヤバい」といった感情について「なぜ?」「どこが?」などといった形で掘り下げていくこと。その方法が体系的に整理されており(たとえば、「好き」であればそれは共感なのか驚きなのか、共感であれば今までの体験や好きなものとの共通点は何か、驚きであれば何が新しかったのかなどなど…)、それがこの本全体の筋だと思う。意外と書かれていることは私自身が日頃意識しているようなものも多く「実は私は良い線いってたのでは!?」と自己肯定感が上がった。それをここまで整理して提示できるのは、著者が書くことに対して真摯に向き合ってきた結果なのかなと思う。一方、「良い線いってる」はずなのに自分でも納得のいく感想とかを書けないのは、「早く読書メーターに登録して、冊数とページ数を増やしたい!」という気持ちで焦ってしまい、確認含め疎かになっているからだ自覚した。なんだかんだ私も数字に踊らされる人間である。本を読むことと同じくらい、自分が書くことも楽しんでいけたらいいなとも思った。 あと、一つ印象に残ったのは、作品全体について感想を書かなくても良い、と書いてくれたこと。これはとても救われた。私は本のレビューを書くとき、どうしても全体の内容について書こうとして、結局途中で挫折して中途半端な(ダラダラ書いてあるけど自分が本当に強く感じた部分についてはサラッとしか書かれていないような)レビューになってしまっている気がしていたのだけれども、「別に書きたい部分を書けばいいのか」と安心させられた笑 そして今回内容ではない部分についてもこの本を読んで感心したことがあった。本のレイアウトについて。重要な部分が太字になっていたり、必要に応じて箇条書きで書かれていたりする。そのためパッと紙面を見ただけで要点がわかり、「ここは流し読みしてもいいかな」とか「ここはメモしよう」という判断がしやすかった。これは紙面の作り方の工夫もあるが、著者の本の構成や文章への工夫の賜物だと思う。また、奥付けには見たこともない数の人の名前が書かれている。普通奥付けといえば、著者、出版者、出版年月日とかくらいしか書かれていないがこの本に携わった人全員の名前が書かれているのではないかというくらいクレジットが細かく書かれている。(一冊の本を作るためにはこれだけの人の手がかかっているのかと改めて思わされる。)こういう情報量の多い奥付けは図書館員的には結構テンションが上がる笑。ぜひこの文化は他の出版社にも広がってほしいし、書誌データにも反映してほしい。
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