すばる 2025年 2月号

3件の記録
- 村崎@mrskntk2025年2月22日読み終わった君が夢から醒めないように/市街地ギャオ すごく好きな小説だった!!!なんだかすごく距離感について考えた作品だった。同棲している悠真と陽翔の距離が少しずつずれていく話なんですが、とにかく細部の描写がめっちゃ好きだった。 他人(おじ)からひげについて指摘されたことから自分の容姿を気にし出す陽翔、ひげだけじゃなくて体型や口臭、歯、肌…身体のいろんなところを作り変えようとする。悠真からしたら、そんなに気にすることなのか?稼ぎがもともと少ないのにそこにお金をかけること?という疑問もありつつ真正面から正直な気持ちを言うことはない。というか正直な気持ちっていうのがなんなのかよくわからない。メメラブとも通じるところがある気がするのですが、他人から見た自分と自分から見た自分、見られている自分と見られていない自分の乖離というか距離感みたいなものの表現がめちゃくちゃすごくて、私たちには多かれ少なかれペルソナというものがあって、だれと話していても「作ってる」感があるというか、正解を探そうとするような感覚が少なくとも私にはあるんですが、それをあまりにも自然に表現してしまっている気がする…。 上司や部長が悪意なく口にした言葉にずっとうっすら傷つき続けて、でもその傷ついている自分をどこか俯瞰しているような視線もあって、その傷つきってつまり具体的にどうして傷ついたのかって考えると、自分自身が傷ついたというよりペルソナが傷ついた?という感覚になる。あと上司と部長っていう肩書きでしか相手を書いていないけど親しげな会話はしているから、それも仮面を被って話している感があってよかった。生きる演技を読んだときも思ったのですが、対人用の顔みたいなものが描かれていると感じると怖いんですよね、自分のかたちがふとしたことで消えそうになるから…。 でも悠真はむりに繕っているわけではなくて、むしろところどころで「誰にも見られていない自分」というのがフラットに描写されていて、そこがとにかく好きだった。 高めのマスクを買って帰ってきた陽翔に対してもったいないと思いながらでも自分でもそれしか売ってなかったら買うだろうし…と自分の無意識に突っこむという場面があったのですが、もったいないなって思うことに対してもったいないって思わないように意識を動かそうとすることに対して「そこまで考えて、ああやっぱりもったいないって思っちゃってるなと自分の無意識に突っこむ」とあって、もったいないって思っちゃってること認めていることが、自分から見ている自分にしか向けない視点の気がしてすごくよかった。あと「突っこむ」て表記がめちゃくちゃ好きです、つっこむ、でもなく、突っ込むでもなく、突っこむ、これ自分の無意識に対する距離感を的確に表していると思った。 あと食べかけのサラダチキンの写真を数回送ってそれが陽翔の生活に溶け込んだから送られてくることがなくなったっていうところとか、フリック入力する必要のない場面でも子犬と赤ちゃんをかわいいと思えるとか、なんというか、自分に根差してる感…!?があって俯瞰的になりすぎていないのも読んでて安心するような感覚。 描写の一つひとつがあまりにもフラットすぎて、小説ってべつに読んで答えを出すとか受け取るものがあるべきとかないと思うし、どう読んでもいいだろうし、テーマ性とかもないものがあったっていいと思うんです、でも君が夢〜を読んでると、自分が今なにを受け取っているのか全然わからなくなって、でもなにかは確実に受け取っていて、はっきりしたものを明示していないけどあるものを書く?っていうのはすごくすごくないですか…?(自分が何を言っているのかわからなくなってきた…) iPhoneの輝度を一番低く設定したところからの、本当に息遣いが聞こえてきそうな緊張感と苦しさと切なさがとってもよかったです! あと個人的には「悠真くん」呼びがツボでした。
