ブーニン作品集 1

1件の記録
sayatakenoko@sayatakenoko2026年4月14日読み終わったかつては栄えていた、輝かしい日々の残滓がそこかしこに見える土地。匂い立つ不在。ひんやりとした静けさ。 「ひとり、狩りを寝過ごしてしまうこともあったが、そんな日のくつろぎは格別だった。目覚めてもずっと寝床にもぐりこんだままでいる。家中がしいんとしている。聞こえるのは、庭師がそっと静かにひと部屋ひと部屋をまわり、ペチカに火をおこしている音や、薪のパーンとはぜる音。さあこれから、音の消え、人気のなくなった冬の家でまるまる一日のんびりできるのだ。ゆっくりと服を着て庭をぶらりとまわれば、湿った落ち葉の中にふと、忘れおかれ、冷たく濡れた林檎を見つけ、それがなぜかまた、えもいわれぬ美味しさで、ほかとはまったく違うように思える。それから本を手にとる。金の星を散らした山羊革の背表紙のついた分厚い革装の、この家に伝わる蔵書。その本の教会の儀礼書にも似て黄ばんでざらざらした厚い紙のなんとふくぶくしい匂いだろう。微かに酸っぱい黴の芳香、いにしえの香水……。その余白に鵞鳥の羽ペンでのびやかに丸みのある柔らかな飾り文字で入れてある書き込みもまたいい。」