

sayatakenoko
@sayatakenoko
「どんでん返しがある」はネタバレ
- 2026年8月12日
楽園夕木春央読み終わった『方舟』『十戒』と読んできた読者としてのわたしは、麻衣ちゃんに対して「この人は自分の生存のためなら躊躇なく他人を殺せる」という強烈な既知の情報を持っていた。これを基に今作の設定下でも(どうせ)麻衣ちゃんがバッタバッタと殺し回るのであろうという予測をする。わたしは康之くんすらリスクとして最終的には排除するのだろうと思っていたけれど、そういうことは起こらなかった。麻衣ちゃんは康之くんに「麻衣ちゃんのところ」まで来てくれることを求め、康之くんはそれを成した。麻衣ちゃんが言ったことには「自由でいるためにはどんなことでもする」。だけど、どうなるにせよ、「ずっと康之くんには一緒にいてほしい」。 思い返せば殺人をしているときの麻衣ちゃんは、『方舟』でも『十戒』でもすごく寂しそうだった。柊一くんも里英ちゃんも、麻衣ちゃんがしたことを知った上で「麻衣ちゃんのところ」には来てくれなかった。病的なまでの自分本位とそれを成し遂げる行動力と悪運のつよさに目を眩まされ、読者であるわたしには麻衣ちゃんの「自由でいるためにはどんなことでもする」という覚悟しか見えていなくて、その覚悟と同じくらいつよく彼女が「麻衣ちゃんのところ」まで来てくれる他人を欲しているのだと気づかなかった。 だから本作のどんでん返しに引っ掛かる…… そしてどんでん返しに引っ掛かれるのは、きっとミステリにおけるいちばん幸福な読書体験である。 - 2026年7月28日
文化人類学の思考法中川理,松村圭一郎,石井美保読み終わった「彼が調査したトロブリアンド諸島に暮らす人びとは、カヌーの制作や耕作においては経験にもとづいた合理的な知識と技法を用いるが、それらの実践にはしばしば呪術がともなう。マリノフスキーは、危険の少ない珊瑚礁で行われる漁には呪術が用いられないのに対して危険で不確実な外海での漁では呪術的儀礼が発達している、といった観察にもとづき、技術によって自然を支配できなくなる時点で心理的な安心や希望を得るために呪術が用いられると論じた。」 自分、トロブリアンド諸島の人と同じことしてるのかよと思ったら、何か、笑ってしまった。 - 2026年6月12日
- 2026年4月16日
- 2026年4月15日
- 2026年4月14日
- 2026年4月14日
ブーニン作品集 1イワン・アレクセーエヴィチ・ブーニン読み終わったかつては栄えていた、輝かしい日々の残滓がそこかしこに見える土地。匂い立つ不在。ひんやりとした静けさ。 「ひとり、狩りを寝過ごしてしまうこともあったが、そんな日のくつろぎは格別だった。目覚めてもずっと寝床にもぐりこんだままでいる。家中がしいんとしている。聞こえるのは、庭師がそっと静かにひと部屋ひと部屋をまわり、ペチカに火をおこしている音や、薪のパーンとはぜる音。さあこれから、音の消え、人気のなくなった冬の家でまるまる一日のんびりできるのだ。ゆっくりと服を着て庭をぶらりとまわれば、湿った落ち葉の中にふと、忘れおかれ、冷たく濡れた林檎を見つけ、それがなぜかまた、えもいわれぬ美味しさで、ほかとはまったく違うように思える。それから本を手にとる。金の星を散らした山羊革の背表紙のついた分厚い革装の、この家に伝わる蔵書。その本の教会の儀礼書にも似て黄ばんでざらざらした厚い紙のなんとふくぶくしい匂いだろう。微かに酸っぱい黴の芳香、いにしえの香水……。その余白に鵞鳥の羽ペンでのびやかに丸みのある柔らかな飾り文字で入れてある書き込みもまたいい。」 - 2026年4月11日
- 2026年4月8日
大衆の反逆オルテガ・イ・ガセット,佐々木孝読みたい『ドイツ史10講』を読んでいて、読みたくなった。 「文化的貴族主義者である彼は、ヨーロッパが陥っている危機の核心を、本来権利よりも義務の重さを知るエリートによって導かれるべき大衆が、エリートを押し退けて支配の座につこうとしていることに見る。ここで彼が「大衆」と呼ぶのは労働者を指すのではなく、義務を知ることなく権利のみを主張し、平準化をこととして自己の要求を他にも強要し、それを暴力的に押し通そうとするような人間類型を指している。」 - 2026年4月5日
豚の死なない日ロバート・ニュートン・ペック,Robert Newton Peck,金原瑞人読み終わった倫理的な抵抗をひと時眠らせ、子どものまっすぐな視点から、厳しくも優しくうつくしい世界を、ただそっと手渡してくる。 - 2026年4月4日
抒情的恐怖群高原英理再読文庫化してるの知らなくて、店頭でびっくりしてしまった。元の表紙も好きだけど、文庫版の表紙が何と、ヒグチユウコ! 思わず買っちゃった。久々に再読。『樹下譚』がめちゃくちゃ好き。読み直してもやっぱり良かった。『怪談生活』もぜひ文庫化してほしい。 - 2026年4月2日
二番目の悪者庄野ナホコ,林木林読み終わったファクトを自分で追い求めようとしないこと・口を開けてぼけっと待って、降ってきた情報をよく吟味せず呑みこんでしまうこと・何も行動しないこと、全部罪なのだと言われているようで、ちくちく刺さる。折に触れて思い出すべき痛みだが、如何せん表現が直接的に過ぎ、手元に置いて読み返そうという気持ちにはちょっとなれない。 - 2026年4月2日
- 2026年4月1日
その昔、N市ではマリー・ルイーゼ・カシュニッツ,酒寄進一読み終わった店頭でパラパラと捲ってみて、巻頭の『白熊』が好みだったので購入。読み終わるのが勿体ないと思いつつ、世界観にひたりながら読んだ。たまらなく好きだ。今週末、マーシャ・シリンスキの『落下音』を観に行くのも、何だかちょうどいいし、図らずも収録作『四月』は、エイプリルフールの話だった。 いちばん好きなのは『船の話』。主人公は船旅をする妹を、乗る予定ではなかった船に乗せてしまう。行き先は同じマルセイユのはずだと言い聞かせ、安心を得ようとするが、船会社に問い合わせても船名は突き止められず、その汽船が南米とヨーロッパを往復する定期船ではないことだけがわかる。船名がわからないので電報を打つこともできない。主人公は毎日屋上テラスから大西洋を眺める。あの船が故障して港に引き返してくるといいのにと願いながら。 そんなある日妹からの手紙が届く。主人公は家族の前でその長い手紙を読む。 最初のうち明るい内容だった手紙はどんどん様子がおかしくなっていく。船長がいない。船員の数が少ない。お客は皆どんな質問にもまともに返答ができない。時計はすべて遅れているか進んでいる。船内新聞の内容もでたらめだ。コンシェルジュに行き先を尋ねても答えない。船員に預けた郵便物が、夜中に海に捨てられている。 彼女は誰にも話しかけられない。貰える食べ物も日に日に少なくなる。彼女はコンシェルジュに「到着はいつなのか」と訊く。その答えは、「到着って、どこに?」。 誰も彼女の話を聞いてくれない。乗客は皆デッキチェアでうたた寝している。彼女もけだるくなり、同じようにじっとデッキチェアに横たわる。誰とも話さなくなってもう二日になる。ちからを振り絞って無気力を払拭し、自分のキャビンに戻ると荷物がいっさい無くなっている。彼女は「みんなわたしたちが見えない」ことに気づく。すぐ近くを通った他の船に、助けを求めて手を振ったり叫んだりしたがこちらに注意を向けるひとは誰もいなかった。彼女は救助は有り得ないのだと知る。 彼女は「これでいいんです」と書く。「たぶんこうなることを望んでいたのです」と。 手紙を読み終わった主人公は家族と共に十字を切る。 - 2026年3月29日
- 2026年3月29日
- 2026年3月28日
黄金旅程馳星周読み終わった競馬ファンとして一度は読んでおきたいと思って、手に取ったけど、このひとの本はもうぜったいに読まない。「キャラクター」が「『物語』をやってる」という苦手なタイプの小説を書きやがり、なおかつその「キャラクター」像が古すぎてキツい。読んでいるだけで息が詰まるような田舎の人間模様、それを「助け合い」とか「ひとのあたたかみ」とか形容して何の疑いもなく肯定する姿勢…… わたしが近寄ったのがわるかった、すみませんでした。 - 2026年3月28日
- 2026年3月26日
読み終わった世界史を勉強中。とりあえず通史を頭に入れようと思って、一冊で通史を説明するような本ばかり読んでいたら、どうしても長くて第一次世界大戦あたりで息切れする。そのまま投げちゃいそうだったので、ひとつアプローチを変えようと思って本屋さんで色々と摘み食いの上選んだのがこの本。学習欲に注ぐ燃料としてはたいへんちょうど良かった。何せ通史が約80ページしかない! 世界史を勉強していていまいち自分の中で確たる答えのなかった疑問(「王国」と「帝国」の違いは何か? 「古代」「中世」「近世」「近代」とは何か? 等)が明文化されて説明されている! ムンディ先生の『世界史と地理は同時に学べ!』とかと近い位置に(わたしの中で)ある。「世界史を学ぶことの面白さ」を感じられる本。積んでいる『教養のための西洋史入門』と『ドイツ史10講』を読もうと思った。 - 2026年3月24日
甦るヴァニタスヴィクトリア・フォン・フレミング,結城円,香川檀読みたい
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