鬼怒楯岩大吊橋ツキヌの汲めども尽きぬ随筆という題名の小説
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- K.K.@honnranu2025年11月16日西尾維新語り手鬼怒大吊橋ツキヌは犬走キャットウォーク博士の猫の面倒を見る事になる。猫を見る内に鬼怒大吊橋ツキヌはある事に気付き……というあらすじだが、そんな事はまるで重要でない本作は、題にある通りひたすら鬼怒大吊橋ツキヌが「世の中ではこんな事が問題視されていて、そういえばこんな単語があるけど、けど昨今は問題視されていて」といった語りに終始する。紙幅が尽きるまで猫の問題に触れられないが、それが不条理文学(殊に『訴訟』や『城』)の系譜にある事は自明。内容の大部分は何か意味があるとも思えない随筆とは名ばかりの文章が続くが、これは現代が情報化された結果、自分と強く関わらない物事にも容易にアクセス出来るようになった事で、受け手は情報価にかかわらずフィルタリングする必要に迫られる状態を語りに落とし込んだのではないか。現実で我らは求める情報に辿り着くためにその十倍は関心のない情報に触れる。現代的というか、実感の伴った作品?読み進める苦痛が評価として言及されるけど、それを一冊の本として発売・読破する価値をこそ読み手は考えられる。
