リリオム (1951年) (岩波文庫)

1件の記録
- RIYO BOOKS@riyo_books2025年3月22日読み終わった人生はそんな気樂に終るものじゃあない。死んでしまった今でも、みんなが名前を知っている。顏も覺えている。何時何を言ったかも知っている。何處で何をしたかもだ。目附きや、聲や、握手の仕方がどうだったか、どんな足音をたてたかも、人は覺えている。その當人を思い出す者が一人でもいる限り、未だしなくてはならんことが澤山あるのだ。え、どうだね、お前は知らなかったろう。人間というものはだな、みんなから本當に忘れられてしまうまでは死んだのではないのだぞ。