レッドゾーン
3件の記録
橘海月@amaretto3192024年8月4日読み終わった令和二年二月、長野県の信濃山病院は県内で唯一新型コロナ患者の受入れを表明した。呼吸器内科医すらいない小さな病院にとってそれは、未知のウイルスと同時に感染の恐怖や偏見や疲弊との戦いでもあった…。あの情報が錯綜していた当時、必死に対応した病院はおそらくこうだったのだろうと思える臨場感。 章を追うごとに語り手が変わり、それに伴い読者の認識も自然と変化するのがいい。「なぜ我々がそんな危険を?」「家族に迷惑が」と言っていた医師が、現状に直面するにつれ徐々に意識が変わってゆく。だからこそ「どうして他の病院は受入れてくれないのか?」と悲鳴にも似た切実さで思わずにはいられない。 物語はあくまでフィクションだが、あの当時日本で、特に地方で実際に起こっていたのは想像に難くない。一箇所だけ受入れた先に待つ「あの病院だけが診ればいい」も、直面していない故の無関心や他人事も「新型コロナに関わる医療関係者お断り」の張紙も。だからこそ最終章の敷島の言葉が身に染みる。ぜひ一読を。

