

橘海月
@amaretto319
美味しいお酒と本、かわいい娘達と唯一無二の友人でもある旦那がいれば幸せ。
本はある時は私の唯一の世界で、またある時はそばにいてくれる友人で、絶望から救ってくれる救世主だった。読める時も読めない時も本はじっとそこにあって、私はただひたすら読んで読み尽くしてまた読みたいなと思う。いつまでも。
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- 2026年6月28日
回樹斜線堂有紀読み終わった六つのSF物語。表題の回樹は、ある日突如現れた巨大な建造物で死者を飲み込む。そうして回樹は死者と同化し人々は回樹を愛しむのだ…。様々な話の中私は「不滅」が印象に残った。死者が腐らず燃えなくなった時、彼らは葬送船に乗せられ宇宙に飛ばされる。果てしない順番待ちの末の解決が恐ろしい 「不滅」は完全なSFなのに、どこか現実味がある。じわじわと破綻が見えているのに、それでも突き進むしかない現状。皆が欺瞞に気づいていながら、それを見て見ぬふりをしている。そして遠からず訪れる破綻。死者を悼むのはなるほど宗教だなと思った。宇宙に葬送は許されるのに、穴に埋めるのは抵抗があるのも。 - 2026年6月27日
#ミステリ読み終わった連作短編集でサクサク読める。新米警察官の主人公南谷が、警視長と、捜査に協力した民間人と三人で飲む…とちょっと無理な展開だが、過去の事件を酒の肴に謎解きを行う設定ありきなので仕方がない。一つの解決を警視長が示すともう一方が違う視点を示す、一粒で二度美味しい構造。 冒頭で事件の関係者の視点があり、続いて警視長から事件の概要と教訓があり、主人公が感心したところで座間味から別の視点が示される。あくまで推測であって証拠はない、だがその方が関係者の行動が腑に落ちる…とはいうものの1話2話はやや強引では?と思った。後半2話がミステリとしては上手いなとも。 ただ、無理な展開への理由づけもあるのだろうが、主人公が終始「女性警察官として…」と発破をかけられるのはう〜ん…となってしまった。物語でも犯行に気づいた警察官が、女性ならではの視点を強調されるところが私にとってはややノイズ。作者が飲みや肴を重要視してるのは『Rのつく月には気をつけよう』など他作品でも見られたけれど、今作でも伺えるのは好印象。毎回登場する店に行きたくなる。 - 2026年6月27日
- 2026年6月25日
災疫の季節MediaDo,中山七里,名村幸太朗#ミステリ読み終わったコロナ禍で世間が振り回され、カルト化した反ワクチン団体が台頭する中、自身の思惑とは異なる記事を掲載せざるを得ず、疲弊する週刊誌副編集長志賀と、逼迫する医療機関で必死に対応する医者の伊達。過激化した人達が病院に侵入し、反ワクチン代表者が殺害され事態は一気に動き出す…。 当時の不安や閉塞感、やり場のない気持ちが上手く描写されていて、その分読み進めるのが辛い箇所もあった。反ワクチン側の言い分ばかりを記事にするくせに、申し訳程度にワクチン肯定の意見も載せて「両論併記だ」と宣う編集長の狡さなど、あるあるなエピソードも多い。ミステリとしてもよくまとまっており、意外な犯人はなんとなくわかってしまった。 - 2026年6月23日
六色の蛹櫻田智也#ミステリ読み終わった魞沢泉シリーズの第三弾。六色と関連した物語は、謎解きはもちろん登場人物の背景まで細やかな描写でぐいぐいと惹きつけられる。文句なしにおすすめ。独立した話と思いきや後日譚もあり、魞沢の一見飄々とした中の脆さや優しさに胸を打たれる。後日譚も含めて「白が揺れた」が秀逸。 次点で花屋が舞台となる「赤の追憶」も印象的だった。何気ない冒頭がその後に効いてきて、様々な感情に包まれる。魞沢のお人よしな面が色濃く出る「緑の再会」もよかった。このシリーズの好みはあれど、どの作品もミステリとしてもヒューマンドラマとしてもおっと思わせられる箇所があり、読後感もよく万人におすすめ。 - 2026年6月16日
地球星人村田沙耶香読み終わった小5の奈月は家族の中で浮いている。毎年夏休みに親戚の家にいとこ同士集まるのが楽しみだ。特に同じ年の由宇とは「恋人」になった仲。彼は自身を宇宙人だと話し、宇宙船が見つかったら星に帰るのだ…。常識とは世間とは何か。「工場」に馴染めない彼らの足掻きが苦しい。 冒頭からよくある田舎の夏休みと見せかけて、大事にされる姉とは異なり放置気味の奈月、親戚の濃い人間関係に役割固定と息苦しい。それでも子供ならではの自由と楽しみも…と思いきや、突如家に帰ると今度は塾講師の性被害にあい…とひたすら救いがない。適応できない奈月と対照的な由宇、彼らが大人になるとより辛い。 - 2026年6月15日
読み終わった弁理士大鳳未来が、商標の権利侵害を突きつけられた宮城のイチゴ農家を助けるべく奔走する。話は王道かつよくまとまっていて、お仕事ものとしてもいいが…。どこかのめり込めないままラストまでいってしまい残念な気持ち。表現や描写のせいなのかなぁ、惜しい。 「絆姫」という、新種のイチゴの商標を大手商社に押さえられ、名前を変更しようにも大手パティスリーがクリスマスケーキにそのイチゴを使用すると広告を打ってしまい…と、絶望的な状況からライセンスを払わず名前変更もせず乗り切る技はすごい!すごいけど…不服はやっぱりその過程も面白く読みたかったなぁというもの。途中の絶望的な状況や人間ドラマや、そこからひっくり返る展開はいいのに、淡々と終わってしまった。 - 2026年6月7日
凪の司祭石持浅海読み終わった商業施設、アルバ汐留で無差別殺人が起こる。犯行はたった一人で、武器は近接の細菌兵器のみ。百代の決行を各々の分野で助けた藤間ら五人は直接犯行に関わらない、はずだった…。少しずつ歯車が狂う中、計画通りに事を進める百代とは対照的に振り回される藤間達。アルバ汐留は阿鼻叫喚に包まれる。 ミステリかと思ったらサスペンスだった。息もつかせぬ百代の犯行がノンストップアクションで描かれ、それまでどのように準備されてきたかが間章として入る。辛いのは、ごく日常を過ごす人達の描写の後に、必ず彼らが殺戮される様子が描かれること。手助けだけのはずだった彼らも、犠牲になったり大事な人を失う。 色々と突っ込みどころも多い話だが、前半はともかく後半の機動隊が導入されてからも百代を止められない描写は、さすがにそうはならないのでは?と思った。人を盾にされて発砲できないのはわかるが、軽装備で複数が飛び掛かれば抑えられるのでは?と。もしくは銃ではない距離をとれる武器で応戦するとか。 いずれにせよ、読み手を選ぶ話だった。 - 2026年6月6日
チョコレート・ピース青山美智子読み終わったチョコにレートに纏わる短編集。高校の文化祭で作るチョコバナナ、元恋人が好きだったビターチョコ、子猫が家に来た日にもらった板チョコ…。 数々のエピソードを、隣でひっそりと彩るチョコレート達。ひとつひとつの話はとても短く、チョコのようにあっという間に読み終える。 エピソードにはB面のようなおまけもあるが、正直いらないかなと思った。あった方がよかったのは、別れた恋人と先輩くらい。ただでさえ短い物語なので、裏面をつけるより物語そのものを掘り下げて欲しい。 短編の尺から仕方ないとはいえ、初見のお客さんに店員がそこまでペラペラと自分語りをするのには少し笑ってしまった。 - 2026年6月2日
有罪、とAIは告げた中山七里#ミステリ読み終わったAI裁判官のソフト、その名は「法神」 実在する裁判官の特徴を数値に落とし込み、判例を学習させると法神はその裁判官が下すであろう判決まで行う…。法神に懐疑的な新人裁判官の円と、意欲的な退官間近な檜葉が対照的だ。AIがもたらす効率化と、AIに運命が左右される収まりの悪さが絶妙。 一見すると、裁判官の業務量と効率化という観点からAI裁判官は画期的にも思える。しかも杓子定規に裁定を下すのではなく、個々の裁判官の思考をトレースし再現するのだ。だが…。 違和感が行き着く先の、AIと事件双方で陥る落とし穴が上手い。さながらマジックで注目しているパフォーマンスではない所に大きな謎が潜むようで、あっと驚かされた。 - 2026年5月31日
窓の魚西加奈子読み終わった現代版『薮の中』さながらな男女四人の物語。二組のカップルが温泉旅行に行く一泊を描いているだけなのに、語り手が変わると雰囲気がガラリと変わり個人の見え方も変わる。物語は翌朝の死体も含めて終始不穏な雰囲気が漂う。ナツから始まりアキオで終わった後は、再びナツを読みたくなること必須だ。 全編を通してやりきれなさが付き纏う。うまくいかないな、と。彼らはそれぞれに必死で恋人に愛情があったりなかったりと温度差はあるものの、心底傷つけたいと思っているわけではないのにとかくすれ違う。一方の話を完全に聞き逃し、不用意な言葉も放つ。自分の事で手一杯で、それぞれの事情に強く囚われすぎて、相手を思う余裕がないのが悲しい。 - 2026年5月26日
スイッチ 悪意の実験潮谷験#ミステリ読み終わった心理コンサルタント安楽の実験に参加することになった、小雪を始めとした大学生や大学関係者六人。彼らに渡されたのはスマホを介したスイッチ。これを押すと家族経営しているパン屋の資金援助が打ち切られ破滅する。期間は一月で参加報酬は百万以上。何事もなく1ヶ月が過ぎるはずだったが…。 思わず一気読みするくらい面白かった。スイッチを押すかどうかのワンセンテンスを魅せる展開にも、それらに影響する登場人物の設定にも、まさかの事件とそれに関連する“犯人”探しにも、どれもいい意味で予想外で引き込まれた。途中の悪の定義や宗教的な考え方も、ともすると脱線になりがちなそれらも物語から浮かないバランスの良さだった。 何より主人公小雪の人物設定が上手い。フラットで感情に流されない人物かと思いきや、過去の出来事から自己の選択を放棄しコインの裏表で決める極端な生き方、そしてそこからの変化や探偵としての思考。極端なキャラが多い中、彼女の普通であり同時に並外れた箇所に好感が持てた。物語だけでなくそうきたか!の場面もあって、ミステリとしても秀逸だった。文句なしにおすすめ。 - 2026年5月21日
暴走正義下村敦史読み終わった『逆転正義』に続くが、話は個々に独立している短編集。インプレ目的でSNSに暴露するインフルエンサー、裏取りをせず記事を書く週刊誌記者、大胆な行動にでるストーカー。彼らの歪な動機と、事態が二転三転するのが醍醐味だ。「エスカレート」を除いて基本的に後味悪い話が多く、モヤモヤが残る。 - 2026年5月17日
リブート!福田和代読み終わった銀行の統合により、旧システムをそれぞれ保守することとなったシステム会社の物語。深夜に叩き起こされ休日を返上し、東京の相手方に嫌味を言われる関西のPM横田と、その東京のPM仲瀬川。対局にある二人が互いを意識しつつも、謎のエラーを解決するジェットコースターストーリーだった。 読み始めた時には、著者のことだからてっきりシステム障害の裏には何かしらの陰謀や犯人の存在があるのかとばかり思っていた。だがそうではなく、思いもよらないミスやちょっとした状況がシステム全体に影響を与えるのだとわかり、物語は池井戸潤のような仕事を中心とした人間ドラマに舵を切った。 面白いのは、正反対の特徴を持つ横田と中瀬川の仕事っぷりだ。新人の部下にも積極的に任せる温厚な横田は押しが弱く、エリートしかいらないと豪語する中瀬川は安心できる部下が不在だ。互いにライバル視し苦手意識はあるものの、エラーの解明と対策という共通の目的で認め合う二人のやりとりと変化がいい。 - 2026年5月16日
川のほとりに立つ者は寺地はるな読み終わった駅前のカフェで働く清瀬は、病院からかかってきた電話で、かつての恋人松木が意識不明の重体だと知らされる。関係性を問われた清瀬は咄嗟に「婚約者です」と嘘をつくが…。“川のほとりに立つ者は、水底に沈む石の数を知り得ない”複雑な想いを紐解いてゆくような物語。 恋人の松木には清瀬の知らない秘密があり、家族と複雑な過去があった。店長である清瀬にとって厄介な従業員な品川にも、松木の友人である樹にも。人それぞれに抱えた秘密は彼らの人生に深く影響していた。そして謎の女性である天音にも…。鬱々としたもどかしさの中にも、意外な爽やかさも感じられた。 物語を通して思う息苦しさは、著者がなかなかに「その人の中にある他者から嫌われる要素」をうまく描いているからかなと思った。清瀬の嫌いな面、松木の、樹の、そして天音の。誰にでもある要素でいて、物語には意外と登場しないこともある面。だからこそ篠ちゃんが言う「ほんとう自分とか確固たるものなんかない」が響く。 - 2026年5月16日
- 2026年5月9日
星くずの殺人桃野雑派#ミステリ読み終わった「宇宙を身近に」と、破格の価格で宇宙旅行に参加する六人と、彼らを率いるパイロット伊東に添乗員の土師。一行は無事に宇宙ホテルに着くも、土師は伊東の亡骸を発見して…。 宇宙空間で起こる連続殺人、不可思議な謎の解明はもちろん、次々と起こる事態に対応するアクションに手に汗を握る。 読み終えてみると、なるほど宇宙規模の動機とトリックだなと思いつつも、それでいて地球で生じる悩みや葛藤の域を出ていないのではとも感じた。それぞれの宇宙にかける思いも、一見すると宇宙でないと実現できないようでいて、実は日常と地続きなのも。宇宙にいる時ですら、我々は地球と切り離せない存在なのだなと。 登場人物の印象も二転三転しつつ、ある人物に対してウザさは感じつつどうしても憎めない気持ちでいただけに、ラストの落ちはそうくるか!となって笑ってしまった。これは必読。 - 2026年5月9日
サーチライトと誘蛾灯櫻田智也#ミステリ読み終わった虫好きな青年魞沢泉が、あちこち出歩くうちに事件を解決してしまうシリーズ。魞沢は名探偵というよりも、偶然居合わせたトリックスターの役割が大きい。小さな謎や会話から、徐々に大きな謎やゾッとする事実に発展する「ホバリング・バタフライ」がお気に入り。 - 2026年5月7日
ビオレタ寺地はるな読み終わった四年近くつきあった彼に婚約破棄され、見知らぬ町で泣いていた妙に声をかけてくれた菫。彼女は雑貨屋でアクセサリーや人形の他に、大事なものを埋葬する小さな棺桶を売っていた…。 絶望から徐々に日常を取り戻す主人公と、風変わりな周囲の人々の優しさが沁みる物語。 一番印象が変わったのは、主人公が「とりあえずつきあう」とした年の離れた千歳だ。誰にでも優しく、女性にだらしないおっさんでしかなかった彼が、日々を重ねるごとに特別な、かけがえのない存在になってゆく。それは妙にとってただのバイトでしかなかったお店もそうで。運命とは劇的なだけでなく、こうした密やかに訪れるものでもあるのだなと思った。 - 2026年5月4日
草原のサーカス彩瀬まる読み終わった製薬会社から大学の非常勤講師に出向した姉の依千佳と、アクセサリー作家の妹仁胡瑠。性格も何もかもが違う姉妹が、それぞれの仕事に邁進し脚光を浴びつつも、どこか歯車が狂ってゆき…。著者にしては珍しく、終始現実的な問いを突きつけられる容赦ない物語だった。 自分が好きなアクセサリーさえ作っていれば、ただ幸せだった仁胡瑠が、ミューズのような女性との出会いからあれよあれよと人気作家となり自身がブランド化し、絶頂を迎えた途端に彼女に去られて何も手につかなくなってしまう様がリアルだった。俗に言う天才と呼ばれるアーティスト、彼らの孤独と依存が手に取るようにわかる。 また、計らずしも治験データの捏造に手を染めることとなってしまった依千佳が、裁判や諸々を終えてからじわじわとやり切れなさが込み上げ「言われた通りにしただけなのに!」と内心憤りを感じるのも辛かった。渦中にいるほど自分が見えず、身を守ることすらできずに利用され捨てられる。実在の事件がベースとなっているだけに重苦しい。
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