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橘海月
橘海月
橘海月
@amaretto319
美味しいお酒と本、かわいい娘達と唯一無二の友人でもある旦那がいれば幸せ。 本はある時は私の唯一の世界で、またある時はそばにいてくれる友人で、絶望から救ってくれる救世主だった。読める時も読めない時も本はじっとそこにあって、私はただひたすら読んで読み尽くしてまた読みたいなと思う。いつまでも。 Xは@amaretto319
  • 2026年8月18日
    T島事件 絶海の孤島でなぜ六人は死亡したのか
    う〜ん…著者の別作品もそうだったが、正直アンフェア感が否めない。孤島で死亡した六人、残された映像から解き明かす謎…とフリは悪くないが、結末がどうしても肩透かしに思えてしまう。映像を見ながら推理を披露する過程はいいが、それを超える結末はなく取り残された感が残念。 著者の別作品もそうだったが、入れ子状態が好きなのだろうとは思う。伏線の回収の仕方をメタに求めるというか、読者が小説に求める範囲外に真の解決があるというか…。にしても、孤島で映像スタッフが連続で亡くなる別のミステリが頭にチラつき「あれ?これ前に読んだ?」と一人デジャブに陥っていた。
  • 2026年8月17日
    暗い越流
    暗い越流
    探偵葉村晶とその周辺を描いた短編集。特に表題作「暗い越流」は秀逸で、ちょっとした叙述トリックも仕掛けられていて、私はまんまと引っかかった。バイアスの恐ろしさよ…。死刑囚へ届いたファンレターを調べて欲しい…弁護士から頼まれた一つの依頼がある事件に繋がり、それがまた別の事件に繋がる話の妙が巧みで、謎解きと並行して語られる家庭の闇の描写もとにかくリアルで惹き込まれた。 それにしても、若竹七海はクズを書くのが本当に上手い。それも地に足のついたクズを。彼女の本には主人公に絡むためだけのクズは登場せず、そこに至るまでの過程や背景が想像できるものばかりだ。だからといって、愛すべきでも何でもなくクズはクズで。「関わりたくない」と思わせるクズのバリエーションが豊富だ。
  • 2026年8月16日
    扉は閉ざされたまま
    大学時代のサークル仲間が同窓会的な集まりを開催する。そこで殺人を計画する主人公。刑事コロンボのように犯人は冒頭から明かされてはいるが、動機と展開はわからず。当初予定していたスケジュール通りに物事が進まずイライラする主人公とは対照的に、探偵役は冷静沈着で主人公を追い詰めてゆく…。 犯人は探偵に見破られるだろうとは誰もが予想しながら読み進めただろうが、そこからの結末は予想外だった。ただ著者の別作品で、完全犯罪の穴を指摘するものがあり、それの亜種と思えば納得。わずかな手がかりで真相に辿り着くのはややご都合主義と思えなくもないが、犯罪が暴かれるかだけでなく主人公と探偵の微妙な関係性の行末もあり、そこまで中弛みはせず楽しめた。
  • 2026年8月14日
    いまだ下山せず! 増補改訂版
    1987年1月5日、槍ヶ岳を目指した三人が予備日を過ぎても下山しないと一報が入る。それは家族にとって、パーティーが所属するのらくろ岳友会にとって、長い長い捜索の幕開けだった…。三人はどのルートを通り、どこで遭難したのか?同日登山者の証言から彼らを探す執念に頭が下がる。 広大な山の複数あるルートのどこを通ったのかわからず、どこで遭難したのかもわからない。それでも彼らを見つけるというその一念だけで半年以上の捜索を続け、本当に探し出した。幾つもの証言を繋ぎ合わせて可能性がないルートを消し、最後に一ノ沢に辿り着くまでの紆余曲折の全てが描かれている。
  • 2026年8月3日
    告白の余白
    告白の余白
    四年も音信不通だった双子の兄が帰省し自殺する…。冒頭から重く、兄の死の真相を知るべく舞台を京都に移した後も京都の伝統が重くのしかかる。図らずも京都が舞台の物語が続き、本音を言わない文化に思いを馳せる。不自由だがそこに誇りを持つ人と出てゆきたい人の葛藤。 ミステリ的ではあるが、ミステリとしては全てが解決するわけではない。人の気持ちは最後までわからず、亡くなった人のそれは更にわからないまま、生きてゆく人が抱えるしかないモヤモヤも、京都を外から見た主人公のそれと重なる。外からならいくらでも言える。中にいないと見えないものもあるのだ。
  • 2026年8月2日
    彼女はそこにいる
    彼女はそこにいる
    独立しつつも繋がっている、ある家を巡る三つの物語。順に怪談→ミステリ→サスペンスといった具合で、こちらの期待をいい意味で肩透かしされた。古い一軒家に引っ越してきた母娘。いい家なのに、なぜか住人がすぐに越してしまうらしい。娘の茜里はそこで不思議な出来事に遭うが…。 最初の話が一番「世にも奇妙な物語」的でまとまっていただけに、二話目で逆にあれっ?となり、三話目で何とも言えない気持ちになった。そうだよね…自分にとって大事な事が、他人にとってはどうでもいいことがあって、彼らは互いにそうで笑っちゃうほどに勝手なんだなって。あり得たかもしれない未来が切ない。
  • 2026年8月2日
    蝋燭は燃えているか
    『星くずの殺人』続編。前回は宇宙、今回は京都を舞台とし、宇宙から帰還した周を描く。脱出ポッドからの生配信で炎上した周、それでも失踪した瞳子を見つけるためにコメント欄を閉じなかったが、誹謗中傷の中に不穏なメッセージが書かれた直後、実際に金閣寺が燃やされて…。 今回は京都を舞台に、周の内面が深く描かれている。インバウンドにあまりいい印象を持たない地元民の心境や、京都への不満はありつつ外部から言われると言い返したくなる複雑な思い。被害者ではなく加害者家族が置かれる厳しい状況や、その中でも恵まれた相手への嫉妬や取り残されたような感覚。やり切れなさが随所にある。 それにしても“恵まれている”と、そう思う感覚はどうしようもないなと感じた。途中に周がある人物に向けるそれは、そのまま周へと向けられ、また別の人物から別の人物へと向けられる。我々はよくないとわかっていても他者と比べてしまう生き物で、その時点で友人や仲間であったはずの彼らと距離が生じ、人はどこまでも孤独となってしまうのだと。
  • 2026年7月27日
    朝焼けにファンファーレ
    司法修習生達を描く四つの物語。共通の人物はいるものの、主な視点は彼らを指導する立場の弁護士や、検察官なのがポイント。新しい世界に踏み出す彼らを眩しく見つめながら、時にはエールを送り本音でぶつかる。気づくと読者もつい彼らの成長を見守る先輩視点で見ている。 どの話もそれぞれの良さがあるが、最年少で司法試験に合格した柳に焦点を当てた「うつくしい名前」は、被疑者の置かれた環境も含めて心を打たれた。テーマは重く決して読みやすくはないからこそ、切実に迫ってくる。藤掛や松枝や柳が揃う集大成の表題作も、彼ら個々の良さが際立つ構成でとてもよかった。
  • 2026年7月26日
    玩具店の英雄 座間味くんの推理
    通称“座間味くん”が酒の席での会話だけで、事件の隠された謎を解いてしまう連作短編集。アンフェアな話もありつつ、毎回登場す?料理が美味しそうで惹かれてしまう。 表題作も悪くないが、私は「襲撃の準備」でドラマMIU404小日向さん出演回を、あの静かな狂気と「俺は許さない」を思い出した。立派な人が変貌してゆく私のトラウマ回。
  • 2026年7月25日
    心臓と左手~座間味くんの推理~ (光文社文庫)
    座間味くんシリーズ第二弾。七つの短編はほぼ刑事の大迫と座間味くん二人の会話で構成されており、最後の七つ目「再会」だけが、かつて人質となった赤ちゃんが成長し語り手となっている。ミステリとしては表題の「心臓と左手」が一番よかった。宗教的な儀式と裏腹の現実的解決の温度差がよい。 ネタバレになるのでどれとは言えないが、短編の中には著者の別の物語でも使われていた箇所があって、このアイデアからあの作品が生まれたのかもしれないと思うものもあった。ただ事件のあらましから推測される解答はあくまで可能性でしかなく、検証不可能な点も含めるとどうしてもアンフェアに思えてしまう。
  • 2026年7月23日
    月の扉
    月の扉
    一気読みがおすすめ。 カリスマ師匠である石嶺と、彼が主催する不登校などの子供を対象としたキャンプ。救われた子供の一人だったはずの聡美は、仲間の真壁と柿崎とハイジャックを企てる。ある目的のために…。 だが、ハイジャックされた機内で謎の死が起こり、彼らは乗客の一人である“座間味くん”に解決を依頼する。奇想天外ミステリ。 あらすじだけ読むと荒唐無稽にも思えるが、ハイジャック犯である聡美の視点で物語は進み、彼らの関係性や行動は明確でわかりやすい。乗客である通称“座間味くん”は、巻き込まれ型の名探偵ではあるが、彼らに毒づき恋人の身を案じ一歩も引かずなかなかクセが強い。警察側の大迫視点もあり、話の外堀がじわじわと埋まる様子はパズルさながらだった。 師匠の秘密とハイジャック犯の目的、殺人の謎が明かされたと思いきや、その強烈なリンクとともに物語は急展開を迎える。それにしても「カリスマ性があり人を惹きつける魅力的な人物」の行きつく先が新興宗教くらいしかないのかと、やり切れなさも感じる。もう少し石嶺の有効活用があるのでは?と思ってしまった。
  • 2026年7月23日
    女の敵には向かない職業
    表題通り、物語にはいわゆる女の敵、セクハラモラハラがオンパレードな中年男性神薙が登場する。だが途中で語り手が入れ替わると、神薙自身は漫画家として成功し社会的地位もある“立派な人間”としての認識でしかなく、あくまでよかれと思って周囲に迷惑な行動をしていることが伺える。加害者がいかに被害者視点かが巧みに描かれているなと思った。 物語は複数の軸で構成されており、神薙のセクハラや加害者意識だけでなく、漫画家に焦点を当てた仕事ものでもあり、熱狂的なファンやSNSの暴走といった側面を描いたミステリ要素もある。 中心となる漫画家の人物像が具体的かつ魅力的で、読者が好きな漫画家をイメージしやすく、私も憧れだった漫画家が頭に浮かんだ。
  • 2026年7月19日
    レモンと殺人鬼
    レモンと殺人鬼
    様々なヤバい思考を持った人が登場するが、残虐な描写は限定的で物語としては上品な方。殺人鬼の思考を辿るという部分では『ハサミ男』に抱いたのと近い印象だった。一番ヤバいのは殺人鬼ではなく◯◯だよ…と言いたくなること必須。誰しもに裏の顔がある中、私が好感を抱いた人が殺人鬼ではないよう祈っていた。 主人公の状況も考え方も鬱々としているが、文章がうまいのとわずかに挿入される希望で、読み進めるのはさほど苦にならない。読後感も悪くなく、途中の胸くそ悪さはあるものの全体的に爽やかな作品となっている。ある人物については「作者はこの人と何があったの?途中から嫌いになったのかな?」くらいの手のひら返しだった。
  • 2026年7月17日
    魂婚心中
    魂婚心中
    芦沢央『魂婚心中』読了。SF短編集だが内容は多岐に渡り、物語の雰囲気はガラッと変わる。残念ながら表題作はあまり好みではなく、これは私自身の推しへの思いの弱さや鈍さに起因するのだろうと思った。 「ゲーマーのGlitch」は、現実さながらにRTAが描かれており、見たこともないゲームの世界にいるかのような錯覚を覚えた 。ゼルダの伝説のRTA映像で、鍋のフタをスケボーにして壁をすり抜けるあのワクワク感が甦った。 全く違和感に気づけなかったのは「この世界には間違いが七つある」で「九月某日の誓い」は、お嬢様と使用人の少女という世界観がSFというより耽美小説のようで、とてもよかった。これは皆が好きになるだろうし、筆者が後書きで「最も書きたい瞬間」と言い切ったラストは見事だった。確かにあそこからの続編は蛇足だろうな。
  • 2026年7月16日
    新しい世界で
    新しい世界で
    ハイジャック事件に巻き込まれた、元乳児と刑事と乗客。彼らは不思議な縁で繋がり、当時一歳だった聖子が二十歳になった時に焼肉屋で祝杯をあげるが…。 連作短編集なのでさくさくと読め、主人公聖子の成長物語でもある。最終話の落ちはとてもわかりやすく、このために呼び名を不自然に固定していたのだろうなと感じた。 飲み会でのふとした雑談から、刑事がある事件とも言えないエピソードを披露し、一応の結末が示された後で、彼(座間味くん)がその結論をひっくり返すというのが本作のセオリーだ。もちろん彼の推論が正しいかは明かされないが、一見ハッピーエンドな話に苦い解釈が入るのがミソで、それをされると万華鏡のように見え方が変わる。読者は水に落とされたインクのように、その解釈を無視できないというのが共通している。そのためやや強引と思われる結末はあるが、そこは物語としての形で有無を言わせぬ力技で捩じ伏せている。
  • 2026年7月12日
    暗闇法廷
    暗闇法廷
    中途障害者が暮らす施設で殺人が起こり、盲目の女性が逮捕された。弁護士の竜ヶ崎は七瀬と共に彼女の弁護を担当するが、どうも彼女には秘密がありそうで…。途中から真相は朧げに見えてくるが、一番の謎はわからず。なるほど、そうきたか…。冒頭できちんと描かれているだけに、まさかそこを疑いもしなかった。確かにフェアだ。 個人的には、検察官真淵の印象が前半と後半で反転する様がよかった。ドラマ化されたらいい役者に演じてもらいたい。 ただ、その肝心のトリックが著者の別作品でも使われていて「さすがに◯◯を便利に登場させ過ぎでは…」と思わなくもない。まぁ、ミステリとしては便利な存在なのだろうけど、そこまで日常的に◯◯はないし、ましてや◯◯の◯◯◯◯◯はそうそう起こらないよ…とは思ってしまった。
  • 2026年7月12日
    全員犯人、だけど被害者、しかも探偵
    欠陥製品を隠蔽したと批判された企業の社長が自殺し、その関係者が廃墟に集められた。社長夫人、遺族代表、記者、運転手などの閉じ込められた七人は、スピーカーから謎の声で「48時間後に皆が死ぬ。社長を殺した犯人だけは助かる」と指示を受け、次々に我こそが社長を死に追いやった犯人だと語りだすのだが…。 かなり大風呂敷を広げたタイトルだけに、ちゃんと結末を迎えられるのか?とハラハラしながら読み進めていた。通常なら誰しもが「自分は犯人じゃない」と主張する場面が逆となり、自身を犯人とするために他の人の無実を証明する探偵を務める、という構図は面白い。飽きてきたところの違和感と新展開もよかった。途中はトリックの博覧会みたいで贅沢だった。 個人的にはデスゲームからの生き残りシーンが鮮やかで、映像としてすっと浮かび上がった。
  • 2026年7月11日
    犯人に告ぐ4 暗幕の裂け目
    前作を読み終えてから時間が経ってしまい、物語の世界に入り込むのに時間がかかったうえ、前半は前作の事件を引きずった後日談的要素が強く、正直物足らなさを感じた。首謀逮捕に至る過程も、もっとカタルシスを得られると期待していただけに残念。 『犯人に告ぐ』は、冒頭から息もつかせぬ緊迫した状況とは対照的な、巻島の飄々とした姿が印象的で好きなシリーズだった。今作も巻島は登場するものの、味方をも欺く鮮やかな手法というよりも、僅かな敵の綻びを丹念に拾ってゆくといった様子で、彼も歳をとったなと思ってしまった。私は敵を追い詰める狩人としての巻島が好きだったんだと思う。
  • 2026年7月8日
    きみの正義は 社労士のヒナコ
    社労士二年目の雛子は、今日もクライアントの相談で忙しい。雇い止めにセクハラ、残業の不払いと、企業側の立場でありつつ労働者に寄り添う雛子が、うん?と感じた疑問から背後に見え隠れしていた事実が浮かび上がる、社会派ミステリ要素もある一冊。 前作から引き続いた話もありつつ、興味深かったのはセクハラに纏わる「藪の中を探れ」まさに芥川龍之介の短編のように、両者の言い分が真っ向から対立する。この微妙なニュアンスと日々の積み重ねが、ハラスメントで疲弊する要素だよなとしみじみと感じた。ハラスメントとまでは言えないが、確かにある芽が嫌だなとも。書店が舞台の「わたしのための本を」も、読者として書店が置かれた現状が身に積まされる。
  • 2026年7月6日
    ひよっこ社労士のヒナコ
    単純に社労士、社会保険労務士のお仕事ものとしてもわかりやすくてよいし、様々な会社に纏わる人達の仕事に関する人間模様としてもよかった。 派遣社員から資格をとり労務士となった雛子は、今日も顧問契約企業から色々な相談を受けて…。面白くためになる一冊。 連作短編集としてもよく、特に印象的だったのは「カナリアは唄う」「飾りより、灯りより」「空に星はなく」とやりきれなさが残るものばかりだった。社労士として仕事に一生懸命になればなるほど、相手方の企業からは煙たがられる…法律と正しさだけでは経営が成り立たないもどかしさが詰まっている。一筋縄ではいかないながらも、雛子ができる限り食い下がって労働者にとってよりよい環境をと奮闘する様は好感が持てた。
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