100分間で楽しむ名作小説 文鳥

5件の記録
- あそ@aso_aaaaa2025年1月3日読み終わった@ 日本橋年始に読んだ。 結末は想像どおりといえば想像どおりではあるが、文鳥のひとつひとつの所作や心情を淡々と、絶妙な距離感で描写する文章の書き方が美しくてかなりすきだった〜 「嘴の色を見ると紫を薄く混ぜた紅のようである。その紅がしだいに流れて、粟をつつく口尖の辺りは白い。象牙を半透明にした白さである。この嘴が粟の中へ這入る時は非常に早い。左右に振り蒔く粟の珠も非常に軽そうだ。文鳥は身を逆にしないばかりに尖った嘴を黄色い粒の中に刺し込んでは、膨らんだ首を惜気もなく右左へ振る。籠の底に飛び散る粟の数は幾粒だか分らない。殻は奇麗に吹いた。吹かれた殻は木枯らしがどこかへ持っていった。水も易えてやった。水道の水だからたいへん冷たい。」 読み終わってみるとこの本の帯に抜粋する一文の選び方は、予感を感じさせてたいへんいい 「粟はまだある。水も未だある。文鳥は満足している。」 一緒にまとめられていた『夢十夜』『琴のそら音』もおなじくすてきな文章表現で、メモをたくさん取った。