ヴァリス新訳版

ヴァリス新訳版
ヴァリス新訳版
フィリップ・キンドレッド・ディック
山形浩生
早川書房
2014年5月1日
3件の記録
  • CandidE
    CandidE
    @araxia
    2025年4月11日
    「生まれたのは叡智であって、神性ではなかった。片手で斬り殺しつつもう片方で癒やす神性……そんな神性は救済者ではない。だからぼくはつぶやいた。神様ありがとう。」 期待値を下げることは重要だ。PKDの問題作、『ヴァリス』。私はおそらく途中で意味不明になり、読書を棄権、放り投げるだろうと予想していた。あるいは非常に満足度の低い読書体験を予想していた。もともとPKDの作品が好きかというと、「いくつかめちゃくちゃ好きな作品はあるが、他はまあまあ」という程度だったから。 ところがである。この『ヴァリス』が意外にも面白かった。好かった。 何が? どこが? ちょっとキリスト教や西洋の歴史、文化についての教養が必要かもしれないけれど、普通に面白かった。『スキャナー・ダークリー』の直後に読んだため世界観を引き継ぎ、すべての議論に切実さと切迫感が感じられた。ストーリー展開の奇妙さやご都合主義的な流れは、外部から見れば狂気の世界そのものだろうさ。けれども集団内部における共同幻想とその秩序は、知的好奇心と真理探究の情熱、そして皮肉とユーモアに満ちている。「救いとは何か?」という問いの展開は、PKD自身の神秘体験をストレートに暴露しつつ、切実で真実味を帯びつつ小説内で昇華されていて、特にソフィアとの対話は胸に染みる。 「あなたたちはここでは異人だけれど、あたしにとってはちっとも異人じゃない。最初からあなたたちのことは知っていた。ここはあなたたちの世界じゃなかったけれど、でもあたしがそれをあなたたちの世界にしてあげる。あなたたちのために変えてあげるわ。恐れないで。あなたたちを攻撃するものは消え去り、あなたたちは繁栄するわ。」 『ヴァリス』、意外に良い。いや、めっちゃ好い。訳も好い。個人的には、『スキャナー・ダークリー』の直後に読むことを推奨いたします。
  • luli
    luli
    @azoth-shark
    2025年3月6日
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