筑摩現代文学大系〈50〉石川達三集 (1976年)蒼氓 生きている兵隊 神坂四郎の犯罪 骨肉の倫理 三代の矜持 自由詩人

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- たご@clan_19672025年6月23日読み終わった『生きている兵隊』 発行後すぐに発禁処分となり、裁判にまでかけられた作品。 著者である石川に反戦の意図はあったのか、そうではなく、彼が証言するように、ただ銃後に胡座をかいている国民に喝を入れたかったのか、その真意はわからないが、いずれにせよ戦争の一つの実態と当時の軍部の対応を今に伝えるうえで重要な意味をもった作品だと思う。 基本、兵士たちは喜んで戦争に加わっているわけではない(一部例外はいるが)。できるなら人なんて殺したくないし、戦うのだって怖い。でも、だからといってどうすることもできない。戦場から逃げ出したところで、どうなることでもない。だから次第に彼らは諦め、慣れてゆく。それどころか、異常さを進んで受け入れようとする。世界とか時代とか、そういった大きなものの前では、人はあまりに無力だ。