世界を揺るがした10日間

1件の記録
- CandidE@araxia2025年8月23日読み終わった紀行文を読むノリでいけるだろうと踏んだら、これは革命だった(当たり前である) 正直、普通に読むのが難儀。ゆえに、まずは巻末の「ロシア革命関連年表」をじっくり眺め、わからない用語や歴史の文脈を押さえてから本文に進むことを推奨したい。 で、それでも、なんというか、文章がただ私の中を通過するばかりで、読後に残ったのは、よくわからない熱情のみ。この世のものでありながらこの世のものではない、夢と悪夢の摩擦熱。 本書には、リード自身の偏向や記録の粗が少なくない。たとえば文字の読めない兵士の検問で危うく銃殺されかかる場面は、机上ではなく弾丸の径内で書いた証左と言えるが、感情が不自然なほど抑えられていることに首をかしげざるを得ない。この本文に散見される非識字の兵士よる検問は、識字問題を強調するモチーフとして、革命の倫理的正当性と情報の解像度の高さを二重露光で示すと同時に、著者自身をヒロイックに演出する装置のように見える。ここに疑念が生じるが、それでも革命への情熱の迸りは、ある種の甘美である。この危うい二面性が、本書の魅力だと思った次第。 革命の熱に、誰よりも深く魅せられた若きジャーナリストによる、生々しく、主観に彩られた記録文学。