華々しき瞬間

華々しき瞬間
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久坂葉子
無双舎
2010年8月4日
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  • 編集Lily
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    @edition_lily
    2025年5月24日
    ⁡ 20代の頃ハマった久坂葉子。 ⁡ 西崎憲さんが編者を務める『5月の本』(国書刊行会「12か月の本」)に、彼女の短編「入梅」が収録されていたので久しぶりに読んだら、今さらながらあまりの巧さに恐れ入った。 ⁡ そんなわけで、引っ張り出してきたのがこちらの作品集。太宰好きなら彼女の短編はけっこう好きなんじゃないかと思う。ただただ巧い文章を味わう喜びが得られる。しみじみ素晴らしいのは「入梅」と「落ちてゆく世界」。 ⁡ 「入梅」は未亡人となった「私」が、雇っている使用人男女のあいだに芽生えた色恋沙汰とその顛末に苛立ち、気を取り直し、やはり苛立ち…複雑な感情が五月の庭の風景とともに描かれる。 ⁡ 〈そして二人をとがむよりも、自分自身があわれでたまらなかった。未亡人、なんといういやな言葉だろう。女がひとりで生きてゆく、なんとかなしいことだろう〉 ⁡ 〈空がにわかに、くもって、雨がふり出した。梅雨に入ったのだと、私は庭先に眼をやった。作衛の語ったおはるのことなど、もうどうでもよかった〉 ⁡ 四十代ならまだしも、二十歳そこらでこの端正な文章を書いたのだから、ぜひ長生きしてほしかったと思う。昭和27年の大晦日「幾度目かの最期」を書き上げた二十一歳の彼女は、鉄道自殺を遂げた。 ⁡ #編集Lily #書肆Lily #りり子読書
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