私小説from left to right: 日本近代文学

私小説from left to right: 日本近代文学
私小説from left to right: 日本近代文学
水村美苗
新潮社
1998年9月1日
1件の記録
  • 「それは「私」と「アメリカの私」との間の溝、あるいは、「日本の私」と「アメリカの私」との間の溝というべきものーーいや、より正確には、「日本語の中の私」と「英語の中の私」との間の溝というべきものであった」 「もちろん中国人との連帯感も自発的には生まれなかった。(…)彼らとの連帯感はひとえにアメリカの社会に強制されて芽生えていったものでしかなかった。」 「日本では想像もしなかった。黒人を交えての生活は、珍しくもおもしろくもあった。どうしてそれが私にとって居心地がいい生活であるべきなのだろうか。ーーNo. 私は自分の疑問をこの短い一言に封じ込んだ」 「I realized that it wasn’t just Henryk who made me look cheap. I made him look cheap too, because I was Oriental」 「I wish I were twenty years younger or twenty years older (…)ところが一回しか与えられていないこの人生は今刻々と形をとっている最中でしかなかった。」 「ーーあああ、なんか人生つらいわね ーーうん。 ーーespecially on a night like this…」 *** 血でも育った場所でもなく、言葉が私を規定する。私は縦書きの日本語の世界に生きてきた。けれども、現実の不条理に晒される。それでも20年そうやって生き延びてきた。私は、”実際に”、言葉とともに、日本語とともに生きねばならぬ。その旅立ち。ラストシーンは、「東京物語」のクライマックスを想起した。けれども、ここから始まるのだ。何かを葬らなくては始まらない、そう思った。
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