オリエンタリズム

オリエンタリズム
オリエンタリズム
エドワード・W.サイード
今沢紀子
平凡社
1986年10月1日
1件の記録
  • サイードによれば、18世紀的ロマン主義や素朴なエキゾチズムとしてのオリエンタリズムは、近代化の過程で文献学や類型学などによって制度化され、自民族中心主義や帝国主義を補強するディシプリン(学問的装置)へと変貌していった。そもそもロマン主義(あるいはメシア主義)とは、他者を想像的に構築し、それを通して主体自身の欲望や権力、優越性を確認する身振りであり、こうした構造は、「西洋(男性)が東洋(女性)を他者化し、解釈し、享受し、支配する」という男性的権力幻想とパラレルであり、オリエンタリズムそのものが、そうした主体性を確認するための装置であるといえる。そして現代においてもオリエンタリズムは社会的・政治的なヘゲモニーを生み出し、維持する役割を果たしている。 「誰が誰を語るのか」「誰の視点で書かれるのか」。このように語る・記述するという行為自体が、いかに政治的権力構造の中にあるのかを自覚させたことが、サイードの最大の功績であり、そして、グラムシ、フーコー、サイードの議論を経たいまだからこそ、そうした語りや記述に対して「それって結局、ポジショントークでしょ?」という視点をえることができたといえる。
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