瓦礫の中から言葉を

瓦礫の中から言葉を
瓦礫の中から言葉を
辺見庸
NHK出版
2012年1月1日
1件の記録
  • 句読点
    句読点
    @books_qutoten
    2025年8月21日
    東日本大震災後に書かれた本。 もう14年も経ってしまった。 このタイトルが表すように、震災後の自粛の空気感の中で窒息してしまったような言葉ではなく、 個の中から出てくる言葉について考える一冊。 石原吉郎、原民喜、堀田善衛、川端康成、串田孫一などの言葉に触れながら、本当の言葉を探っていく。 震災で顕になったのは、それ以前からあった言葉と実体のあいだにある断層ではないか、と。 石原の言葉が、SNS時代の今の言葉のあり方を再考させる。 「いまは、人間の声はどこへもとどかない時代です。自分の声はどこへもとどかないのに、ひとの声ばかりきこえる時代です。日本がもっとも暗黒な時代にあってさえ、ひとすじの声は、厳として一人にとどいたと私は思っています。いまはどうか。とどくまえに、はやくも拡散している。民主主義は、おそらく私たちのことばを無限に拡散して行くだろうと思います。」 (「失語と沈黙のあいだ」『石原吉郎全集Ⅱ』花神社より) 拡散する言葉でなく、誰か一人に届く言葉を。 「言葉がもっともよくとどくのは、語り手(書き手)も聴き手(読み手)もまったくの「個」であるときだけです。徹底的に孤立的な個であるほど、言葉は人の胸にとどくのではないか。わたしはいつもそう思っています。」 p171より。 人を集団から抜け出させ、個にするような言葉を。霧のような言葉でなく、重さのある、手触りのある言葉を。空虚な言葉ほどよく拡散するが、人の内部にまでは届かない。拡散しなくともいい。今これを読んでいるかもしれない誰かに届く言葉こそが、求められている。 そうした言葉に出会ったと感じる時、人は言葉の力を知る。この本は私のために書かれている、と思わせるような本と出会う時がある。そういう本との出会いを求めている。本当はみなそうした言葉を求めているんじゃないか。そうした言葉を求めて、スマホの画面を右から左に動かし続けているんじゃないか。
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