シャムロック・ティー

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gato@wonderword2026年7月5日読み終わった再読オールタイムベスト久しぶりに通しで読んだ。カレンダーは聖人伝説にまみれ、ジョイスとイェイツは神父になりウィトゲンシュタインは彷徨える庭師となり、ブラウン神父が実在するノスタルジックで少し歪んだ世界で、不思議な力にめざめていく少年少女たちのジュヴナイル。 かと思いきや、北アイルランドにおけるユニオニストとナショナリストとの激しい抗争を下敷きにした陰謀小説でもある。饒舌なトリビア(年代を感じさせるファッション描写の異様な細かさが楽しい)の裏でカーソンが書かなかったことを考えながら読んだら、セレスティーン叔父さんの「君たちはミツバチに似ている」や、モーリス叔父さんの「自由意志さ、わかるね。許してくれるよ、な」にゾクッとした。 表面的には最後までのんびりしていて幻想的でズッコケ気味なのだが、ペレーヴィンの『宇宙飛行士オモン・ラー』とも共通する、受け継がれる憎悪とプライド、それを守るために固く築き上げられた物語のおかしさとかなしみがある。でもその世界観のなかに、中世から障害者を周縁に追いやらない共同体を育んできたゲール(フランドル)のお話が入り込んでいたりする、カトリック世界ならではの豊かさにも気付かされる。 そしてやっぱりカーソン本の魅力といえば、栩木伸明さんの訳文! 特にこの『シャムロック・ティー』では、ベレニスの声の訳し方が本当に大好きだ。 やあ、イトコ君、なんで手紙書いてこないんだっておもってるよね、わかるんだ。あたしも君のこと考えてたから、君もおんなじだろうってわかるわけだよ。あたしのことなら心配いらない。元気。君もたぶん元気だよね。元気でいろよっておもっててあげるよ。あんなことになっちゃってあたしのせいだって怒ってる、もしかして? 61p
