珍妃の井戸 (講談社文庫)

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- umi@umi02182025年10月2日かつて読んだ昔から歴史が好きなのだが、近代史まわりのことを考えると浅田次郎の小説を思い出す。 浅田次郎はとにかく語りが上手い。この小説は義和団事件の混乱で殺されたとされる清の光緒帝の側室・珍妃を「誰が殺したのか?」という謎に迫るミステリ的な作品で、章ごとに登場人物が代わる代わる各々の視点で義和団事件を語っていく。 (注:歴史としては珍妃は西太后に殺された、と見るのが通説である) 教科書で単語として覚えてしまった歴史的な出来事を、小説の中の人物が、生々しく語る。予備知識がなくとも、序章を読めば清朝末期の混乱や、いかに清という国が諸外国に蹂躙されてきたかがわかる。フィクションといえど、この生々しさ、心に訴える力強さは物語の力ならではである。