メアリ・ジキルとマッド・サイエンティストの娘たち 下

メアリ・ジキルとマッド・サイエンティストの娘たち 下
メアリ・ジキルとマッド・サイエンティストの娘たち 下
シオドラ・ゴス
原島文世
大谷真弓
市田泉
鈴木潤
早川書房
2025年8月20日
7件の記録
  • madeleine
    madeleine
    @madeleine
    2026年9月26日
  • madeleine
    madeleine
    @madeleine
    2026年9月22日
  • ⭐️⭐️⭐️ 「狂気」から生まれ落ちた娘たちの、したたかで痛快な逆襲劇 19世紀末、霧に包まれたガス灯のロンドン。 ヴィクトリア朝の影落とす裏路地で、もしもあの有名な古典SFやゴシックホラーに登場する「狂気の科学者(マッドサイエンティスト)」たちに、その忌まわしい実験の犠牲となった「娘」たちがいたとしたら? セオドラ・ゴスによる『メアリ・ジキルとマッドサイエンティストの娘たち』(上下巻)は、そんな本好きの好奇心を強烈に掻き立てる魅惑的な設定から幕を開けます。 本作は、上質なミステリであり、ダークファンタジーであり、何より不確実な世界を生き抜くための「したたかな知性」に満ちた、最高にエンターテインメントな群像劇です。 ■名作群が交錯する、贅沢極まりないパスティーシュ 物語の主人公は、あの『ジキル博士とハイド氏』でおなじみのジキル博士の娘、メアリ。 母を亡くし、借金と孤独を抱えた彼女は、亡き父が謎の秘密結社「錬金術師協会」に関わっていたことを知ります。 そして、父の闇を暴くため、あの名探偵シャーロック・ホームズとその相棒ワトソンに調査を依頼するのです。 事件を追う中で、メアリは次々と奇妙で魅力的な少女たちに出会います。 野性味あふれるハイド氏の娘ダイアナ、猛毒を体に宿したラパチーニの娘ベアトリス(ナサニエル・ホーソーン作)、ピューマから人間に改造されたモロー博士の娘キャサリン(H・G・ウェルズ作)、そして巨体と怪力を持つ心優しきフランケンシュタインの娘ジャスティン(メアリー・シェリー作)。 文学史に名を刻む傑作たちの「その後」や「裏側」を同一世界に落とし込んだ贅沢な世界観は、読書家であればページをめくる手が止まらなくなる至福の体験を約束してくれます。 ■「私」の物語を取り戻すためのメタフィクション 本作を単なるパスティーシュ(模倣作)から一段高い次元へと押し上げているのが、その卓越した語りの構造です。 物語は「キャサリンが執筆し、メアリが編集している回顧録」という体裁で進みます。しかし、その本文中には他の娘たちが絶えず割り込んできます。 「私の活躍がもっと必要よ!」「ホームズはそんなこと言ってないわ」と、劇中劇のようにツッコミを入れる彼女たちのユーモラスな掛け合いは、暗く猟奇的な物語に絶妙な明るさをもたらしています。 しかし、この「口出し」は単なるコメディ・リリーフではありません。 男性の科学者(=創造主)たちによって勝手に身体を改変され、さらに男性の作家たちによって悲劇の存在として「書かれてしまった」彼女たちが、ついに自らの手でペンを握り、「自分の人生の主導権(ナラティブ)」を取り戻すための戦いでもあるのです。 ■安易なポジティブ思考を排した、生き抜くための知性 社会から見れば、彼女たちは間違いなく「怪物(モンスター)」です。 秘密結社の陰謀に巻き込まれ、世間からは排斥されかねないマイノリティとして、常に危険と隣り合わせの状況にあります。 しかし彼女たちは、己の運命をただ嘆いたり、あるいは「なんとかなる」という安易なポジティブシンキングに逃げ込んだりはしません。 毒を持つ体や、獣の衝動、巨大な身体といった自らの「負の遺産」を冷静に受け止め、最悪の事態を想定しながらも、それを逆手にとって社会をサバイブしていく「防衛的ペシミズム(防衛的悲観主義)」とも呼べる極めて実践的な知性を発揮します。 メアリの論理的・構造的な思考と、娘たちの物理的・直感的な力。 それぞれが持つ異質の「二つの知性」が組み合わさることで、立ちはだかる困難を打ち破っていくプロセスは、現代の不透明な世界を生き抜くための確かなヒントに満ちています。 ■疑似家族が織りなす、最強のシスターフッド 自らを都合のいい実験材料としてしか見なかった「父親」たちの野望に立ち向かうため、彼女たちは互いの違いを認め合い、「アテナ・クラブ」を結成します。 そこには、血の繋がりを超えた強靭なシスターフッド(女性同士の連帯)による疑似家族が誕生します。 19世紀ヴィクトリア朝のクラシカルな衣装をまとってはいますが、彼女たちが直面している「社会からの抑圧」や「自立への渇望」は、驚くほど現代的です。 自分の身体は誰のものか。自分の居場所はどこにあるのか。 孤独だった少女たちが、言葉と知性を武器にして連帯し、巨大な権力を持つ男たちの思惑を軽やかに、そして力強く粉砕していくラストは、深いカタルシスを与えてくれます。 古典文学の教養、スリリングな謎解き、メタフィクションの遊び心、そして胸を打つ人間ドラマ。 『メアリ・ジキルとマッドサイエンティストの娘たち』は、物語の持つ力を信じるすべての人に贈る、圧倒的な熱量を持った傑作です。 ぜひ、彼女たちの最高に痛快な逆襲劇を、その目で見届けてください。
  • しゅう
    @shu031414
    2026年3月26日
  • つきつづ
    @tsuzuru
    2026年3月20日
    ということで下巻 引き続き娘たちはハチャメチャしており、ミセス・プールの気苦労が留まるところを知らないわけですが、それはそれとして、探偵さんもいい塩梅でお茶目感があり、みんな可愛くてよろしい 海外文学にあまり触れてきていないので、元ネタが分かったり分からなかったりするのが……という気はします 拾いきれてない気がするものの、本編への支障はないので、これを機会に触れるかどうかは諸説
  • ふと
    ふと
    @sak_nya
    2026年1月4日
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved