あゝ、荒野
2件の記録
咲@lunar_mare1900年1月1日寺山修司は、私の「特別」だ。 いつだって、頭の中に血をぎゅんぎゅんと巡らせてくれる。視界がチカチカと眩むほどに、過剰な血を供給する。あゝ。 寺山修司は、この、生まれてはじめての長篇小説を、歌謡曲の一節、スポーツ用語、方言、小説や詩のフレーズなどの「手垢にまみれた言葉」をコラージュすることで作り上げた。 ラストシーンには惚れ惚れする。 「一発、二発、三発、四発、五発、六発、七発!」 八十九発まで連なる、この、単なる数字の羅列が、どうしようもなく「詩」だ。 一発一発を、殴り、殺すようにして、心を揺らしながら全て書き写す。 「私は近頃、「ことば」でも「性」でもなく「暴力」というものに興味を持つようになってきた。暴力という伝達行為。暴力という連帯方法。これはいかがなものであろうか?何人も、戦場に於ける兵士のようにきびしく「相手」を見張ることは出来ないし「相手」の一挙手一投足に興味を持つことは出来ない。そんなことから、私はボクシングに心魅かれるようになった。あの、殴りながら相手を理解してゆくという悲しい暴力行為。相手を傷つけずに相手を愛することなどできる訳がない。勿論、愛さずに傷つけることだって、できる訳がないのである。」 「いかにして新宿新次を憎むか。憎まなければ新次と試合をすることは出来ないし、試合しなければ「新次に勝つ」ことは出来ないだろう。そしてそれなしでは、彼は自分自身の人生の意味を解説することができないという気がするのである。」 「あいつはたぶん、俺に殴り倒されようとたくらんでいるのだ。俺の手で徹底的に打ちのめされ、血まみれになって倒れることによって、俺とのっぴきならない関係を持とうとしているのだ。」 「俺はとうとう「憎む」ということができなかった一人のボクサーです。俺は皆が好きだ。俺は「愛するために愛されたい」」 目の前が 一望の 荒野だ
