流血女神伝 帝国の娘 前編

流血女神伝 帝国の娘 前編
流血女神伝 帝国の娘 前編
船戸明里
須賀しのぶ
集英社
1999年7月6日
1件の記録
  • これじゃなくて紙のコバルト文庫で読んだのだが、上手いこと検索に上がってこないので電子書籍で登録。以下シリーズ全体を通しての感想なのでネタバレがあります。 『流血女神伝』、良いエンタテイメント小説でした。近世ヨーロッパ&トルコ史をふんわりとモデルにしてそうな異世界が舞台の小説。歴史物っぽい怒涛の展開(具体的にはルトヴィア帝国という大国が行き詰まり、他国の侵略を許して滅びてゆく様)はかなり大河小説的なおもむきがある。 タイトルにもある流血女神ザカリアと、ザカリアの息子にして夫のタイアスという二柱の神がこの物語の背後に存在していて、登場人物達は歴史の潮の変わり目に巻き込まれながら、自身や自身の大切な人々の去就について神に祈る。歴史とは人が作ってゆくものではあるのだけど、それと同時に一人ひとりの人間にとっては巻き込まれざるを得ない大きなうねりでもあり、そこには神の行いとしか思えない不可思議な偶然も渦巻いている。 一人ひとりの人生の背後に確かに神がいる時思わせる、また仮にいなくても祈らずにはいられない人の心というものがある、ということをかなり克明に描いた小説で、こういう、信仰や宗教の真実みみたいなものを少女小説の中で描いているってかなりユニークだと思ったし、すごい筆の冴えだなと思ったりした。 友人におすすめされて漫画版を読み、そこから原作を一気に読んだのだけど、非常に良い小説でした。 少女小説というものがやはり好きかもしれぬ、と今更ながらに気付いたので、しばらくそれ系統を読んでみようかと思います。
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