山本周五郎長篇小説全集 8 正雪記 上

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- さぶ@sabu_shugoro2025年9月19日上下巻読了。由井正雪の乱の独自解釈+創作という構成。江戸幕府成立後による改易により職にあぶれ、浪人となった武士たちを憂い、なんとかして幕府の武断政治を変えさせようと奮闘した由井正雪の話。史実と異なる部分はあるが、山本周五郎のヒューマニズムが発露されている作品。「壮烈な死を選ぶよりも、敵の刃で最後切り伏せられるまで生きていこう」という類の言葉を発する由井正雪の生き様は「樅の木は残った」の原田甲斐を想起させた。どうしようもない世の流れの変化の中でも、自らができることはあるはずだ、と最後まで模索し続けるのか、自らの誇りとともに死ぬか、そのどちらの人物の生き様がしっかりと描かれている。