妻は二度死ぬ

妻は二度死ぬ
妻は二度死ぬ
ジョルジュ・シムノン
Georges Simenon
中井多津夫
不明
1985年8月25日
1件の記録
  • あっという間に読んじゃった。 軽く読める小説も良い。 かと言って、ただのエンタメ小説でもなかった。ちゃんと文学してた。 文学してるってどういうことかな。 人間の複雑さ、奥深さを描けていると、文学してる気がする。いや、複雑さというより、割り切れなさというか。キャラ化されてないというか。 セルランが真実を知った後の結末の付け方が煮え切らないのが本当っぽくってよい。 結局、人間はそんなに思い切った行動には出られないものだよ。 アネットの裏の顔は途中から薄々勘付いていたが、特にひねりもなくやっぱりそうだったのかという感じ。 でも、それが物足りないわけではなく、ちゃんと小説として成り立っている。これが本物の持つ力か。 基本的に私は何もしない人を好む傾向がある。 だからセルランに同情的に読んでしまうのだろうか。 彼のことをつまらない男とは思わない。 セルランの父親や、彼の世話をしていた女性など、目の前の人生をただ生きている人に温かい気持ちを向けたい。 同情するとか共感するとかじゃなく、寄り添うというほど関わりたくもなく、でも蔑んだり軽蔑したり非難したり批判したりでは絶対になく、褒めるとか讃えるでもなく。ただ、冷たくない目を向けたいのだ。 冷たくない目で彼らを見たい。
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