世界はさわらないとわからない(1008;1008)

世界はさわらないとわからない(1008;1008)
世界はさわらないとわからない(1008;1008)
広瀬浩二郎
平凡社
2022年7月20日
1件の記録
  • ワット
    @watt
    2025年10月22日
    瞽女や琵琶法師が活躍していた時代には、触る文化が一般的だった。これが、近代化の中で資格が優先する文化が形づくられていった。その先兵はたとえば、博物館である。大阪・国立民族学博物館に在籍する全盲の著者は、ユニバーサルミュージアムを提唱し、博物館からの、触文化の再興を考えている。視覚障害者と晴眼者という分類に対しても異議を申し立て、触常者と見常者という分け方を提案している。  みんぱくは、文化相対主義を基本にしていて、その流れにも沿うものだ。「合理的配慮」「誰ひとり取り残さない」という発想からは、主語が欠けていて、マジョリティの優位性が透けて見える。今こそ日本ライトハウス、点字毎日以降の視覚障害者と近代を問い直すべきと、鼻息が荒い著者。オヤジギャグ的な連想が多いのは、同音異義語が多い点字ユーザーのあるあるかも。あと、短文の最後のキメがいちいちスローガンっぽくなっている不思議。  障害者のアクセシビリティ確保や鑑賞サポートの活動は、もちろんやった方がいい。だけど、個々人に対応できるよう精緻化すればするほど「障害者」として話がくくれなくなる。結果としては、差別というと言葉は厳しいけれど、分断に与するようになってしまう気もする。背景にある文化の、深い理解がいるのだろう。
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